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百万円と苦虫女のramca999のネタバレレビュー・内容・結末

百万円と苦虫女(2008年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

百万円の旅を決める出所後の食卓の四つ巴はテンポ感良く好き

嫌な柵から解放されるために
自分と向き合うことから逃げるために
誰も自分を知らない場所なら楽になれると思って出た百万円の旅だったけど
どこに行っても何かしらの面倒ゴトは付きまとう

最初の海の家ではナンパ男をテキトーに遇らって煩わしかった

次の村では勝手に桃娘にされそうになって断ったら罵倒された
でもここでは嫌なことははっきり言った方が良いと言ってもらって味方でいてくれる住み込み先の人たちもいた

次の町では自ら旅の経緯を話して中島と付き合った結果、ATM使いされた(と思っていた)
これまで飲み込んできた気持ちをぶつけることができた
(この中島に向き合うシーン、沈黙の中で麦茶の氷がカランと鳴るのがあの気まずさを表す素晴らしい演出だった)

ここまでかき氷を作る才能や桃をもぎ取る才能が見つかっていたけど、初めてうまくいかなかったホームセンターにも脚本的意味があったと思う

他人からも自分からも逃げるための旅だったはずが結局人と関わって、鈴子は自分と向き合っていった気がする

そこに旅に出る前に唯一素直に向き合えていた弟に対して、自分の逃げなかった姿勢(近所の人に迷惑掛けたわけじゃないんだから堂々と近所を出歩く)が弟を苦しめているかもしれないことを手紙で知る

弟の自分はそんなに悪いことをしたのか?という疑問は猫を結果的に殺した同居人の荷物を勝手に捨てて刑事告訴された時の気持ちと重なる
自分はその気持ちに蓋をして逃げる旅に出たけど、弟は逃げずに戦うことに励まされる鈴子

「出会うために別れる」というこれまでネガティブだった旅がポジティブな旅に変わった瞬間
最後駅でのすれ違いは観客はみんな勿体無いと思ったと思う
それだけに作品の中で「次の出会いへの価値ある別れ」に昇華されたのかなと思う
この時の鈴子の「来るわけないかっ」の清々しさも彼女の人としての強さを感じた

この出会いを強調するように、引越し先それぞれの登場人物が端役までキャスティングちゃんとしてるなと思った

主人公と重ねて弟の心の変遷を丁寧に描いた良作だった

そして、蒼井優ってやっぱすごい女優なんだなって思った
演技がうまいのか、キャスティングがうまいのか、両方なのかわからんけど、めちゃハマってる
ナチュラルすぎる
この役でも女性としてエロく見える瞬間もあって漏れ出てんなあって思った
そんな好きな女優さんでもなかったのにそう感じたのすごい
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