うめまつ

バベットの晩餐会のうめまつのレビュー・感想・評価

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
4.2
この映画を観る前に海亀のスープやウズラのパイを仕込んでおくことは流石に無理だったけど、これは料理というより信仰心と芸術家として生きることについての映画だった。調理シーンを見る気まんまんだったので前半はちょっと退屈したけど、若草物語フェチなので老姉妹二人で暮らしてるのには憧れる。ただ若い頃と現在(老齢)の配役、逆の方が良いのでは?明らかに顔立ちがあべこべなのでどっちがどっち??って何度か混乱した。(ここから内容に触れます。)

もっと若い頃見てたら理解できなかったかもしれないけど、バベットが自ら一万フランを出してあの晩餐を振る舞った理由がしみじみわかる。私も彼女の腕があれば同じ事をしただろう。築き上げた人生の全てを奪われ、失意の中14年間も祖国を離れ隠れるように暮らした彼女が、誰かの為ではなく自分の為に思う存分力を発揮出来る機会が巡って来たのだ。やらない理由が見当たらない。まさしく最高の仕事をした後、満ち足りた表情でワインを飲むバベットが格好良かった。調理場でずっとフルコースのおこぼれもらってる謎のおじさんが居て、めちゃくちゃ羨ましいポジションで変わって欲しかった。(後から将軍の御者だと判明。かなりワイン飲んでたけど帰り大丈夫?) あと一人で料理もワインもサーブしてた少年、給仕は初めてだろうにそつがなくて素晴らしい。でもあの村にあんな若い子居た??

村の人達はもっとバベットを信頼してても良さそうなのに、フランス料理の材料を見て何を食べさせられるのかと戦慄し悪夢まで見る、というのが面白かった。実際ユーモラスにも描かれていたけど、それぐらいあの村は孤立していて、宗教上も贅沢を避けていて、かつ理解できないものを排除しようとする人間らしさまで伺える。その後みんなで美味しい料理をたらふく食べて心まで満たされて、いがみあっていたのも忘れて星空の下輪になって歌っちゃって、幸せを絵に描いたように美しいひと夜の出来事だったな。そりゃあハレルヤしちゃうよね。「あの世に持って行けるのは人に与えたものだけだ」
うめまつ

うめまつ