おーたむ

犬神家の一族のおーたむのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(1976年製作の映画)
4.0
往年のヒット作ということでレンタル。
まだ子どものころに1シーンだけ見たのが、スケキヨが一族の前でマスクをめくり上げるところで、以来ずーっと、めちゃくちゃ怖い作品だと思い込んでいました。
そういう意味では、長年トラウマだった作品の全容をついに見ることが出来た、とも言えるのかもしれません。

で、件のシーンですが、今見てみると、盛り上げどころではあるけれど、そこまで怖がるほどじゃなかったなあ…って感じ。
第一の殺人の場面とかでも思いましたが、現代の映像技術レベルを見慣れた目で見ると、どうしても作り物っぽさは感じちゃうなと思いました。

一方、私がこれまで怪奇ミステリみたいなジャンルに触れてこなかったこともあり、雰囲気は面白いなとも思いました。
戦後期の地方都市の街並み、一代で財を成した怪物的当主、その死で巻き起こる遺産相続の争い、冴えない余所者の探偵、条件付きながら莫大な財産を手にする美女、仮面の男、見立て殺人、もう一人現れる顔を隠した男、亡き当主の秘密、などなど。
前述した作り物っぽさも、こうした怪奇的な雰囲気の醸成に寄与していると言えなくもないし、古き良き昭和の香りが匂い立つような演出は、当たってたと思います。

話も面白い、というより飽きません。
連続殺人の犯人はもとより、作中に二人出てくる顔を隠した男の正体、当主がなぜ血縁のない者への遺産の相続を決めたのか、結局遺産相続はどうなったかとか、謎が複数あるので、興味はずっと持続します。
遺体をやたら派手に遺棄しているのが、見立ての意味だけではないというあたりは、ミステリっぽくて上手かったですね。
エンタメミステリらしい盛りだくさんな内容で、満腹感ありました。

あと、作品の本質に関する評価じゃありませんが、石坂浩二とか、島田陽子とか、坂口良子とか、この時代の二枚目俳優さん、美人女優さんがバリバリ旬で魅力的な感じで、けっこう眼福な作品でもありました。
ちょっとクセはあるけど、岸田今日子とかも、私はけっこう好きな雰囲気だったし。
こういうあたりの配役も、エンタメを志向した結果なのかなと思いましたが、そういう配役には、またそれなりの楽しさがあって、面白かったです。
さすがは往年のヒット作。

ということで、その後人気シリーズになったのにも納得の、面白い作品でした。
完全に大衆娯楽に振り切った作品なので、特に刺さるメッセージとかはありませんが、特徴的なムードと、たくさんの要素を詰め込んだストーリーが味わえる、手堅い作品だと思います。
言うほど怖くはないので、怖いの苦手な人でも大丈夫なんじゃないですかね。
だってこのパッケージ、怖いっていうかおかしいでしょ?(笑)
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