<概説>
大富豪の遺言状に記されていたのは、条件によって血縁のない女がその遺産を相続するという旨だった。このあまり不条理な遺言をめぐり、一家は骨肉の争いを繰り広げることになる。
<感想>
原作小説を読了しているとこれはたまらん作品ですね。いくらかオミットされた箇所があるにしても、あの世界観を完全構築してくれただけでも最高。
昨今の邦画における言葉遣いやカメラワークではできない素朴な日本情景。あの独自の雰囲気は俳優を見せようという魂胆では演出できません。
主人公の金田一耕助の微妙に野暮ったい姿もイメージしていた通り。近年の名役である古畑任三郎や杉下右京とは違う、私立探偵らしい胡散臭さがあっていい。
他にも『TRICK』の矢部警部の元ネタであろう橘署長や伝説的キャラクター・スケキヨ等、見所満載。
原作者横溝正史がゲスト出演したのも心にくい演出。事前情報で知っていたのでついつい彼の姿を探すことに。見つけた時はついついニヤリ。
唯一気になったのは最後の見立てにおける解釈が変わってしまったことですね。斧(ヨキ)の見立てのためにあんな名シーンになったはずなのに、そこの意味が消失してしまったのは首をひねるばかりです。