こたつむり

麗しのサブリナのこたつむりのレビュー・感想・評価

麗しのサブリナ(1954年製作の映画)
4.0
少女マンガの原点のような物語。

やだ、なに、これ。キュンキュンする!
って、キモい書き出しでゴメンナサイ。
でもですね。僕の中の“乙女心”が疼くのですよ。踊るのですよ。謡うのですよ。

って、そんなもの存在しないですね。
でも、「凡庸な娘さんがパリに行って大変身!憧れの王子様の心を射止めちゃう!」って女性の夢じゃないのでしょうか。うんうん。…って、僕が頷く話じゃないですけども。

しかも、これが二流の作品ならば。
凡庸だったときと輝いているときの“差”を過剰表現していたかもしれませんが、本作はそんな野暮なことはしません。ほんの少しのさじ加減だけで変身させるのです。つまりは、“元々から魅力的だった”ということなのです。

そう。今は月に行くことを躊躇する時代じゃない。ほんの少しだけ上を向けば幸せが来るよ!とも言っている作品なのです。くぅ。キュンキュンする!また、翻して言えば“重要な部分を男たちは見逃していた”とも言えるわけですからね。世の殿方は先入観に振り回されてはいけませんよ。幸せの花は裏庭に咲いているのです。

そんな素敵なシンデレラストーリー。
巧みに仕上げたのは、さすがのビリー・ワイルダー監督。どんな修羅場においても、雨上がりの夜空のようにカラッとしている展開なので、サクッと楽しめちゃうのです。

しかも、名台詞と名場面が多いのです。
パリの料理教室やら、バナナの歌やら、スフレのエピソードやら、シャンパングラスを巧みに使う策士ぶりやら、ビンに残ったオリーブの出し方やら…好きな場面は全て!と言えるほど、瀟洒な場面に満ちています。最高です。だから、鑑賞中は誰にも見せることが出来ない“十八才未満お断り”のニヤケ顔をしていたに違いないです。やば。

ただ、それでもあえて難を言えば。
ハンフリー・ボガードの配役は歳の差が激しすぎる…かなあ。撮影当時は55歳くらいですかね。オードリーが25歳くらいですから…その差30歳!父親と娘ほどに離れているのですね…。うん。それだけは、ちょっと擁護できないかなあ。

まあ、何はともあれ。
ファッション業界においても“サブリナパンツ”で歴史に名を残した作品。モノクロ作品だけどお洒落な雰囲気は今でも衰えませんよ。
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