真一

ハワイ・マレー沖海戦の真一のレビュー・感想・評価

ハワイ・マレー沖海戦(1942年製作の映画)
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 狂信的な天皇軍国主義💥が吹き荒れる大日本帝国🎌の下で製作された、海軍🚢のプロパガンダ映画🎥。「生き生きとしたファシズム💣️」を体感できる貴重な作品です。点数は、付けようがありません(笑)

 本作品は、思考停止の「天皇陛下バンザイ軍人」として、ゼロ戦🛩️のパイロットに成長していく主人公の義一(よしかず)👦を、模範的な青年として描いています。基本的人権を否定し、戦意を強調するほど、上官💂‍♂️から「おー、たくましくなったな」と褒められる義一。そんなトンデモ内容にもかかわらず、帝国海軍🚢の全面的なバックアップを受けたこの戦意高揚映画🎥は、空前の大ヒットを記録し、感動の輪を広げたようです。

 そして特撮監督は、戦後の「ウルトラマン」の生みの親である円谷英二。1970年代の円谷プロの特撮を彷彿とさせる場面が、てんこ盛りです。日本人🇯🇵の精神史においても、映画史においても、戦前と戦後は地続きだという悲しい事実を見せつけられた思いがします。

 印象的だったのは、郷里の先輩👤が、戦友を失って落ち込む儀一👦を「性根がなっとらん」(`皿´)と叱るシーン。戦友が事故死した責任は自分にあるのではないかとヒューマニズム的見地から悩む儀一に対し、この先輩は海軍兵学校在学中、天皇陛下バンザイ主義💥に覚醒👀したとして、その経緯を語る。

 「豁然と(かつぜん、急に視界が開けるように)感じるものがあった。『自分は自分でない。自分は無だ。自分のことごとくは、かしこくも…(急に背筋を伸ばして)…大元帥陛下のために捧げ奉ったものである』と、腹の底からはっきりと悟ったのだ!」

 先輩は、たたみかける。

 「これは日本人なら、誰でもあるべきものだ。三千年の昔から脈々として伝わってきた日本人の血だ。この血が大和魂だ!軍人精神だ!国民感情だ!どうだ、分かるか!」

 このアッツアツの軍国主義指導🔥を受け、儀一も覚醒👀する。

 「はい、分かります!」

 念のために申し上げますが、これは戦後反戦映画の一コマではありません。真珠湾奇襲作戦翌年の1942年、海軍省が「あるべき日本人像」を伝えようと放った啓蒙プロパガンダ映画🎬️です。これをみて「うむ、日本人はかくあるべきだ」と噛み締めるのが、本作品の「正しい見方」なのです。

 そして当時の観客👥は、海軍省の狙い通りに感激し、拍手喝采を送った。もしFilmarksがあったなら、平均点は4.9、レビュー欄は大絶賛の嵐だったでしょう。「頭オカの軍国主義で、ドン引きした」などと書けば、翌日は特高の拷問部屋で生爪💅をはがされていたかもです。

 ちなみに、本作品が出た42年12月といえば、日本🇯🇵がミッドウェー海戦⚔️で米軍🇺🇸に大敗北を喫した後です。ガダルカナル🌴で多くの日本兵が飢えと疫病で命を落としたのも、この頃だった。そうした事実を知らぬまま―仮に知っていても公言できず―銀幕の中で連合艦隊とゼロ戦が大活躍する映画をつくりあげた円谷英二。そして、2年後に国土が焼け野原になるとも知らず、プロパガンダ映画に拍手を送り続けた当時の大衆👥。こうした政府による情報工作の企みは、今後も繰り返されるのでしょう。国家って、恐ろしいです。
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