みきちゃ

ニクソンのみきちゃのレビュー・感想・評価

ニクソン(1995年製作の映画)
4.0
「ペンタゴン・ペーパーズ」にグッときて「大統領の陰謀」を観て「ザ・シークレット・マン」を観てさらに「フロスト×ニクソン」も観たら、いよいよラスボス「ニクソン」鑑賞の流れ、あると思います。
 
映画冒頭。時は1972年6月17日の午前1時21分。同日午前3時に予定されているウォーターゲート・ビル214号室への侵入計画の直前打合せをするメンズの様子。いわく、「清く正しい生活も今日で終わりだ」。

史実と証言をベースに、アメリカ合衆国第37代大統領リチャード・ニクソンの半生が描かれる。先に観た4本と決定的に違うのは、大統領時代のニクソンを、人間味たっぷりに、まあまあウェットでセンチメンタルなタッチで見せてくるところ。ニクソンてホワイトハウスから世界を黒く侵食する絶対巨悪マンでしょーというイメージが出来上がってたところでこれを観て、でもだからといって矛盾を感じることもなくて、監督オリバーストーン力と主演アンソニーホプキンス力をびしびし感じた。
 
1960年。ニクソンは、選挙でJFKに負けた。エリートを絵にかいたようなJFKと、何をとってもJFKに劣ると思っちゃってうじうじJFKをライバル視し続ける、コンプレックスの塊ニクソン君。ジョンのみならずテディも目の敵にしててしつこかった。
 
1968年。フーバーFBI長官との会話は一体なんなん…。どの程度マジなん…。
 
1969年。念願の大統領就任。任期中に、特に外交面ではそれなり偉業を成し遂げてたことをやっと知った。良い実績もあるんやん。それで有頂天ニクソンになったのがいけなかった。退任後、ウォーターゲート事件でしか語られないことが無念でしかたないっぽいニクソン君の様子は、映画「フロスト×ニクソン」でも垣間見られた。
 
映画中盤でNYタイムズのペンタゴン・ペーパーズ事案が勃発。余裕しゃくしゃくでマスコミも世間もなめてるニクソン君。「なんだっけあいつら、あのほら、ワシントンポストのウッドワードとファーンスティン?」と名前もうろ覚え。テキトーにのらりくらり犬の話とかしといたら世間も忘れるだろう的にたかをくくってて、実はもう足元をすくわれてることに気付いていない。

ここぞという所で外すのがニクソン君のかわいいところ。例えば、1960年のテレビでのJFK戦。いまだに語り草の討論会。さらに映画にあった、ベトナム戦争に納得できない学生たちのデモがやまなかった時に彼らのど真ん中へ降臨する場面。せっかくの学生達と直で会話する機会で爪痕を残せなかったのはちょう残念。
 
ニクソン君の成り上がりっぷりだけは手放しで凄かった。南部の貧しい雑貨屋生まれからの実質世界最高権力ポジションは超アメリカンドリーム。光と影がくっっっきりしてる人生。他者の評価を借りないと自己肯定ができなくて、なにかと悪い方に、パーソナルに受け取ってしまってて一人で生きづらくなってるニクソン君だった。リンカーンの肖像に向かって「俺は◯つの屍をこえてきた。あなたは幾つほど?」と感傷的に語りかける場面が印象的。
 
ニクソン君的にはいろいろと「思てたんとちゃう!」なのかもしれないけど、アメリカ史、いや世界史に強烈な存在感を残したのは確かで、勝手にシリーズ化させてもらっちゃったくらいハリウッド映画も作られてるし、結果的にすごいと思うよニクソン君!頭切り替えて、天国でハッピーに暮らしてて!
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