マヒロ

炎のランナーのマヒロのレビュー・感想・評価

炎のランナー(1981年製作の映画)
2.0
ユダヤ人の血を引き周囲から潜在的な差別を受けている事に思い悩むハロルド・エイブラムス(ベン・クロス)と、牧師の家系に生まれたエリック・リデル(イアン・チャールソン)の2人は、お互い陸上競技の才能を持つことから1924年のパリオリンピックを目標に練習を進める……というお話。

ヴァンゲリスによる有名なスコアと共に浜辺を駆け抜ける青年たちの画が印象深い青春映画で、苦悩を抱えながらも自身の目標に向かって突き進むという構図と、ゴールに向かって走る陸上競技の構図がリンクしているところとか、とことん爽やかなザ・スポーツ映画という感じ。

悪い話ではないんだけど、全体的に綺麗過ぎてあまり自分の琴線に触れるところが無く、いまいち印象に残らなかった。そもそもスポーツ全般に興味がないので、スポーツ映画とあまり相性が良くないというのもあるんだけど、それでも好きな映画はあるので単純に相性が良くなかったのかな。

一番気になったのは、一番キモとなるはずの走るシーンでいちいちスローモーションになってしまうところで、確かにそのまま流すだけだったら10数秒で終わってしまって呆気ないというのも分からんでもないんだけど、走るということの生の感触が味わえないもどかしさが強かった。ラストのリデルが走るシーンなんかは、それまででもとびきり遅いスローモーションの中で走るリデルは上半身ばかり映っているし、おまけにそれを見守る観客の顔のカットまで何度も挟まれてやたらと間伸びし、疾走感も何も無かった。

「人種」と「信仰」という大きな悩みを抱える2人の主人公についても、もう一つその悩みの深掘りが足らず、そこのドラマに薄さを感じてしまった。そもそもこの2人を演じる俳優さんが地味顔すぎて、沢山いる登場人物の中で埋没してしまっているのもマイナスかも。

アカデミー賞も獲った作品で、確かに普遍的な良い話であるというのは分かるんだけど、個人的には全く刺さらない一作だった。

(2022.9)
マヒロ

マヒロ