マヒロ

コレクターのマヒロのレビュー・感想・評価

コレクター(1965年製作の映画)
3.0
社会に馴染めず蝶の収集だけが趣味の青年・フレディ(テレンス・スタンプ)は、クジで手に入れた大金で町外れにある古い屋敷を購入する。そこで以前から街で見かけて惹かれていた美大生のミランダを誘拐し屋敷に閉じ込めてしまう……というお話。

ウィリアム・ワイラー監督の作品を観るのは3作目。ロマコメの『ローマの休日』、歴史スペクタクル大作の『ベン・ハー』ときて、サイコ・スリラーたる今作と、ジャンルの振り幅がデカすぎて驚く。何でも卒なく撮ってしまうあたりは昔気質の職人監督という感じ。

フレディはとにかく利己的な性格で、攫ってきたミランダに対して「自分を好きになれ」と言い放ち、もちろん自分を誘拐したような男のことを好きになれるわけがないミランダが、無理やり好意をもったようなフリをすると「心がこもっていない」とヘソを曲げるなど、どうにもならない頑固さがある。演じるテレンス・スタンプの澄んだ色の綺麗な瞳が逆に底の見えない不気味さを放っていてハマり役だった。

時代も時代なので、そこまでサイコパスについての考証が進んでいない感じがあり、誘拐監禁という行為以上の恐ろしさはなく、何がしたいのかも明確でなく全体的にフワッとした印象。ただ、逆にその目的の不明瞭さがあからさまな変態が出てくるのとは違う、未成熟な人間がやったことがたまたま上手くいってしまったみたいな怖さもあるかもしれない。

嫌な余韻を残すラストといい、どこか掴みどころの無い気持ち悪さが漂う映画全体の雰囲気は嫌いではないんだけど、ほぼワンシチュエーションのスリラーとして、もう一歩踏み込んだ異常性やハラハラするようなピンチがあったら良かったかな。

(2021.250)
マヒロ

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