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オリーブの林をぬけてのMovingMoviesのレビュー・感想・評価

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)
3.0
『オリーブの林をぬけて』という映画を観ている我々は、その映画の中で『オリーブの林をぬけて』という映画を撮影しているクルーや俳優の演技を観ることになる。その撮影されているシーンは、ドキュメンタリー風であった前作の『そして人生はつづく』のシーンなのだ。絵を制作している最中の画家自身を描く絵画のように、監督役だとわざわざ冒頭に名乗った「監督」が別の俳優が演じる監督役の演技指導をする。このふたつのドキュメンタリーっぽい作りの映画の裏側で、実は「本物」の恋の物語が進行していたのだ、という作り方。もちろんこの恋の物語もドキュメンタリーではなく映画なのだが。映画の中の映画の中の映画という入れ子構造。

村の人々が起用されているキアロスタミの映画には、映画の撮影中も、映画とは別の人生のドラマも進行しているのだろうと思わせる。決められたセリフをどうしても口にしない人々の思いを、映画でありながら、本当の恋なのだと装い、装いだとわかっても、なお人生や生活がそこから滲んでくるような、後からじんわりする作品に感じた。