Kumonohate

悪名一番勝負のKumonohateのレビュー・感想・評価

悪名一番勝負(1969年製作の映画)
3.9
貞(清次)こと田宮二郎が大映を退社した為、朝吉こと勝新太郎がピンで活躍するシリーズ第15作。

監督はマキノ雅弘。任侠映画を撮らせたら(任侠映画でなくてもだが)やはり格が違う。侠気、男女の情念、筋立て、映像、どこをとっても「さすが御大」の完成度。泣ける。

キャストも豪華。朝吉が窮地を救ったがのちに壺振りになった女ヤクザには、本シリーズ久々の登場、その間に「女賭博師シリーズ」で人気を博していた江波杏子(前回とは別の役)。朝吉と妙な友情を結ぶ元ヤクザには、本シリーズ初登場、「兵隊やくざシリーズ」における勝の相方こと田村高廣。その元ヤクザの恋人には、前作から引き続き(こちらも別の役)の出演となる安田道代。ヤクザ嫌いの二代目を支える先代の娘である姐さんには小川眞由美。同じく二代目を支えるチンピラには津川雅彦。巨匠が撮るだけのことはある。

だが、本作は、果たして「悪名シリーズ」と言えるのか?

銃や刃物は使わない、人を斬らない殺さないというルールは崩れている。また、「八尾の朝吉」と名乗らない、「ワシ酒あかんねん」という台詞が出て来ない。時代がいきなり戦前に(もしかしたら第1作、第2作より前かも)逆戻りしている。などなど悉くフォーマットを逸脱。何より田宮二郎が出て来ない。故に、生命線であった明るさ痛快さ笑いが全く無い。

任侠映画として見れば一流、「悪名シリーズ」として見れば二流の作品。
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