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チェンジリングのkojikojiのレビュー・感想・評価

チェンジリング(2008年製作の映画)
3.8
No.1545
2024.01.03視聴
クリント・イーストウッド監督作品58(2008)

 先日、「まぼろし」のレビューコメントで、「忽然サスペンス」のことを書いていたら、フォロワーさんの「ひでG」さんから、この映画も入るのではないかとの助言をいただいた。今年は、クリント・イーストウッド70作品を完走したいと思っている矢先だったので、早速観ることにした。

 この映画、過去に一度観ている。
封切り当時テレビで予告編が随分流れていて、印象に残っているが、映画のストーリーの途中は忘れていた。
 1928年ロサンゼルスで始まる話だ。
実話でその経緯を追っていくので、年代、場所は大事だ。
シングルマザーのクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)はいつものように、息子ウォルターを残して電話交換手の仕事に出かけだ。
ところが、帰宅すると息子は忽然と姿を消していた。

 クリスティンはすぐにロサンゼルス市警察に捜査を依頼するが24時間経たないと捜査できないの一点張り。
 翌日、捜査は始まるが、息子は見つからない。事件は世間の注目を集めるが、同時に人々は不正が横行する警察に事件を解決する能力があるのか疑問視していた。
 5か月後、市警がウォルターを保護したと連絡が入るが、それは息子ではなかった。
 ところが市警は強引に息子であることを彼女に強要するのだった。ここが一番頭にくるシーンだ。高血圧が心配になるぐらい。

 私は、「誘拐」ほど許せない罪はないと思っている。
 だから「誘拐」の映画は怒りが抑えきれなくて冷静に見れない。(もちろん、自分がそんな経験をしたわけではないのだけれど)
弱い子供を狙う、女性を狙う。「卑怯」が一番嫌いなのだ。

 この映画の犯人は常に笑っていて、薄気味悪いというレベルではない。ところが彼に対する怒りより、この映画の信じられない市長、ロサンゼルス市警、その指図のいいなりになる精神病院の対応に呆れてものが言えなくなる。ちょっと誇張している部分は当然あるだろうが、実話で、実際この誘拐事件の後に大改革が行われたのは事実なのだから、当時のロサンゼルスがいかに腐敗していたか、驚く。1930年当時の日本もこうだったのだろうか。

 この映画、アンジェリーナも熱演していて、すごくいい出来なのだが、私が一番感心したのは、ジョーンズ警部を演じるジェフェリー・ドノヴァンだ。
憎たらしくて、憎たらしくて、うまいなあと感心する。クリント・イーストウッドのキャスティングに拍手だ。
 彼の演技が特に上手いと思わせるのが、公聴会で答弁をするシーンだ。こんな事態でも、こんな場面ではこの手の人間はこんなふうに答えだろうと、思わず唸ってしまう。脚本も上手いし、彼の演技も上手い。実に憎たらしい。

さすがクリント・イーストウッド監督と思わせる作品だった。
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