プペ

チェンジリングのプペのレビュー・感想・評価

チェンジリング(2008年製作の映画)
3.8
まず始めに、私はイーストウッド監督は正直言ってそれほど好きではない。
淡々とストーリーが流れていき、初見では何を伝えたいのかが理解できないことが多い。
世間一般では評価されているが、苦手としている監督の一人でもある。
しかし、イーストウッド監督に対して苦手意識を持っている私であっても、本作は″素晴らしい″と認めざるを得ない作品に仕上がっている。
今まで観てきた映画とは″次元が異なる″と言っていいほどの完璧なデキには驚きを隠すことはできない。

全体に漂う″空気感″が他の映画とはまるで異なる。
張り詰めた緊張感は切れることなく持続しており、映画内の世界に完全に引きずり込まされる。
あらゆる意味において″現実″よりもリアルさを感じられる。

ストーリーについては、通常のイーストウッド監督作品同様に、淡々と流れていく。
ミスを認めようとしないLAPDを過度に非難するような感情は込められていない。
犯人に対する憎悪のような感情も深くは込められていない。
クリスティンに対しても、哀れみを誘うような過度な感情も込められていないと思う。
そのような感情は深くは込められてはいないが、被害者の子供達、加害者の子供を含めて″子供達に対する深い愛情″が注がれていることに気付かされる。
そして、子供に会いたい、子供を捜して欲しいという″母親の愛情の強さ″がしっかりとした基盤となり、彼女の強さや行動に対する原点になっていることに気付かされる。

ラストに関してもまさに秀逸だ。
残酷なストーリーかもしれないが、本作にはきちんと希望が描かれている。
クリスティンは、永遠に希望を持ち続けることができたと感じられるものとなっている。

その救いのあるラストには、まさに映画らしさを感じられ、そしてイーストウッド監督の映画に対する愛情もまた強く感じられた。
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