めしいらず

放浪の画家 ピロスマニのめしいらずのレビュー・感想・評価

放浪の画家 ピロスマニ(1969年製作の映画)
4.1
グルジアの放浪画家ニコ・ピロスマニの伝記映画なのではあるけれど、その実、全編彼が描いた絵の世界観そのままにグルジアの田舎風景を絵画的に美しく切り取ったアート映画だった。素朴で人を和ませる諧謔味を含んだピロスマニの絵のタッチは、どこかアンリ・ルソーと通底する味わいがある気もする。看板画家の細々なれど気ままな生活。誰にも師事せず己の感性を守り通したが故に他人からの評価に人生を翻弄され落魄していく哀れ。西欧で高い評価を得る一方で、そのことへの同業者からのやっかみの渦に巻き込まれ、友人からも見放される。人は勝手に持ち上げたりこき下ろしたりと忙しない。そこに折り悪く大戦が影を落とす。そして晩年、階段下の小部屋での貧窮した生活の末、彼は不遇の中でその生涯を終えるのだ。なまじ高評価されたせいで要らぬ苦難を背負わされてしまったけれど絵のタッチは最後まで変わらなかった。復活祭を祝うその絵には同胞への親愛に満ちていた。
ずっと観たかった映画をようやっと。何と言っても完璧な画作りに尽きる。名曲「百万本のバラ」の画家のモデルがピロスマニだったことを初めて知った。
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