ニャーすけ

007/ゴールデンアイのニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

007/ゴールデンアイ(1995年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

子供の頃「007」シリーズは通っていなかった(GCの『エブリシング オア ナッシング』は好きだった)ので、ピアース・ブロスナン版のボンドを観るのは今回が初めて。
タフガイのダニエル・クレイグに見慣れた感覚からすると、ブロスナンの華奢さは少し頼りない印象だが、どっからどう見てもスケベ野郎全開の甘くいやらしいルックスはプレイボーイそのもので、ジェームズ・ボンドという男根主義的ヒーローの解釈としてはこちらも素晴らしかった。

ブロスナンの軽妙洒脱なスター性に誘引されたのか、作品としてもロジャー・ムーア時代の悪ノリを引き継ぐ軽薄さと荒唐無稽さがありながら、起承転結のしっかりした王道のエンターテインメントに仕上がっているのは監督の功績。マーティン・キャンベル、あんた『カジノ・ロワイヤル』でなぜこれができなかったんだ……。
サンクト・ペテルブルグ市内での、ボンドが戦車で街をめちゃくちゃに破壊しまくるカーチェイスの絵的なバカっぽさも(お前、一応スパイなんだよな?)という感じで爆笑だったが、白眉はやはりなんと言ってもアヴァンタイトル。ソ連の化学兵器工場の破壊工作を完了したボンドが敵陣から脱出する際に、墜落する小型飛行機を追いかけるように自分もパラシュート無しで断崖絶壁を急降下して、その飛行機に難なく飛び乗って颯爽と脱出→ティナ・ターナーの歌声をバックにお決まりのタイトル・クレジット……この繋がりの気持ち良さ! このケレン味溢れるアクションはブロスナンだからこその説得力があって、『ミッション: インポッシブル/ゴースト・プロトコル』以降のイーサン・ハントの命知らずっぷりに通じるものを感じた。(実際にその影響をトム自身も語っていたらしい)

ブロスナン以外のキャストも魅力的。
男を蟹挟みで殺すファムケ・ヤンセンは、その暗殺術と役名(オナトップ=On A Top=騎乗位)のあり得なさと馬鹿馬鹿しさに笑うし、元祖Qであるデズモンド・リュウェリンは、その好々爺っぷりがオタク青年のベン・ウィショーと比較して新鮮だった。
敵役であるショーン・ビーンは、「MI6が生み出した亡霊」というキャラ設定が『スカイフォール』のハビエル・バルデムを彷彿させ、意外と本作からの影響も大きかったのかなと想像した。あとやっぱり、ショーン・ビーンという人が死ぬシーンを見ると毎回「よっ、待ってました!」とお捻りを飛ばしたくなる。
ブロスナン同様、本作が初出演であるM役のジュディ・デンチも素晴らしい。今よりも更に女性軽視が根強かったであろう時代背景を巧みに取り入れた台詞回しが出色で、明らかにナメた態度のボンドに対し「てめーは女性蔑視で時代遅れの冷戦の遺物」「女のアタシがお前みたいな男を危険な現場に送り込むことを躊躇うと思うか? ん?」と冷酷に言い放つ、男社会でのし上がってきた女ならではのパワフルな恐ろしさが最高にかっこよかった。
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