いののん

マイ・プライベート・アイダホのいののんのレビュー・感想・評価

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「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発砲されなくてはいけない」
それは、“チェーホフの銃” と言われている、小説やお芝居でのルールのことだ。私は、 村上春樹の小説『1Q84』のなかで、それを知った。以来、時折、思い出す。


さて。
“〈いの〉の美男子” と言われている、ルールもある(←嘘です!)
「映画の中に美男子2人の恋が出てきたら、それは悲劇を呼び起こす」
ここはやはり、“イケメン”ではなく、“美男子”という少々レトロ感のある言葉を使いたい。リヴァー・フェニックスと、キアヌ・リーヴスは、イケメンという言葉よりも、美男子という言葉の方が似合うような気がするから。


この映画の基調は、穏やかで優しくて、そして牧歌的である。
とてもキツイ現実を包み込むように。
心の中に生きる母は、いつも優しくて、その風景に出会うために、何度でも夢を見る。
マイク(リヴァー・フェニックス)は不幸の何重苦をも背負っているのに、どこかしら飄々としているようにも、達観しているようにも、感じられる。だから尚のこと、スコット(キアヌ・リーヴス)に気持ちを打ち明ける場面に心を揺さぶられるし、母を訪ねて何千里も旅する姿にも心が締めつけられる。


若きキアヌ・リーブスの、なんとまあ、美しいこと! 同性であろうが異性であろうがどのような性であろうが、もうきっと誰だってホレてしまう美しさだと思う。10代で観ていたら、キアヌ・リーブスに私の一生を捧げてしまうところだった。あ-、観たのが今で良かった。


それから、同性同士の恋愛が、悲しい結末で終わるのではなく、ただただ当たり前にそこにあるものとして、ハッピーに描かれる映画がもっと出てきたらいいな、とも思う。私が知らないだけかもしれないけど。そうしたら、“〈いの〉の美男子” という原則については、お詫びしてソッコー撤回したい。


おことわり
今作はチェーホフの銃とは何らかかわりのある映画ではありません。


余談
“〈いの〉の美男子” なんて言ったら、何だか私がお抱えしている美男子みたいで、あるいは私がイコール美男子みたいで、書いていて笑えます。すみません、自分で書いていて自分で笑ってたら、当人以外の方は、ドン引きですよね。えぇ、わかっていますとも。それでも書いてみたかった! ホント、申し訳ありません!
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