ダイゴロウ

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼けのダイゴロウのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

シリーズ第17作目。

屈指の人気回。
評判に違わない大傑作でした。

本作は「寅さんの恋」ではなく、「悪意で苦しむ人間の救済」がテーマとなっている印象の作品でした。(恋愛が主題ではない回は、シリーズ初出ではないでしょうか。)

今回のマドンナである芸者のぼたんは、悪人から200万円を騙し取られており、苦しい生活ながら、他者には明るく気丈に振る舞ってみせる姿は、悲しくも美しかったです。
寅さんとは波長がぴったりで、一緒に過ごす時間は2人とも本当に楽しそう…。
それだけに寅さんが、ぼたんにそこまで本気の熱を持たなかったように見えたのは不思議でした。

本作はなんと言っても宇野重吉演じる青観先生が印象的。(寺尾聰は宇野重吉の息子なので、親子共演となっている。)
序盤の感じの悪さは流石にやり過ぎ感がありましたが、かつての恋人であろう志乃との関係性も大人っぽくて沁みる…。

何よりも、寅さんが青観先生に絵を描くように頼む展開からラストまでの流れが完璧で、ここまで後味の良い作品もシリーズ初だったように思います。
「絵は適当に描けないし、お金にする目的で取り組むことは出来ない」という青観先生の回答は完璧で、それ故にお金にするための作品ではなく、本気で描いた絵をぼたんに送ったのだと思います。
そして、ぼたんの絵を売らないという選択が素敵。
ぼたんにとって絵は値段が付けられない200万円以上の価値があったことが何よりも嬉しくて、彼女が真に救済されたことが分かります…。
騙した男が痛い目に遭わない点以外は、完璧なハッピーエンドでした。