Dana

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼けのDanaのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

好きだなぁ

寅さんの恋物語がメインじゃない回

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2023/06/27
最初見た時は宇野重吉演ずる池ノ内清観のインパクトが大きくて、落書きを買う古本屋の主人(大滝秀治)や、滝野の市役員との絡みをよく覚えていた。
改めてみると、太地喜和子演じる芸者ボタンがいかによいか。リリーとはまた異なったタイプで寅とあんなにも意気投合する新たなマドンナ。200万を男に騙し取られたボタンは東京にきてとらやにお世話になる。話を聞いたとらやの人々は同情し自分のことのように憤慨する。タコ社長の協力のもとなんとか男から金を取り返そうとするが、思い虚しく門前払いを食らってしまう。結局金は最後まで帰ってこない。寅はとうとう男を殺す勢いで、とらやを飛び出そうとする。さくらに明日警察が来ても知らないと言え、そういう寅は行く先も知らないででていってしまう。呆れるとらや一同。ふと、ボタンを見ると大粒の涙を流しながら泣いている。

ぼたん
「私、幸せや。
とっても幸せ。
もう二百万円なんかいらん。
私、生まれてはじめてや、
男の人のあんな気持ち知ったん。」

芸者としての性か、お金の話を最初にした時も場を湿っぽくしないよう気丈に振る舞うぼたん。工場の職工のため、とらやのみんなのため、もしくは自分にために辛い気持ちを押し殺して、明るく振る舞うぼたん。両親を亡くし、それでも芸者として働いて弟を大学に行かせているぼたん。青観にもらった絵をいくらお金積まれても売らないと言ったぼたん。
こんなマドンナ他にいただろうか。唯一無二。間違いなく最高のマドンナのうちの一人。

寅と青観先生が言い争い喧嘩別れしたあの一連。二人の言い分はどっちも正しいと思った。しかし、結局先生はとらにいわれたことに反省したのかぼたんに絵を送る。とらやにきたのもその事を謝りたかったのではないだろうか。そしてその事実を知った寅も東京に向かって先生に謝罪する。自分の非を認めて謝る。こんな単純な事だけど、この二人の純粋さと言うか真っ直ぐな所に美しさすら感じる。
そしてそれをボタンが売ろうとしないのがまた良い。金に囚われ続けてきたぼたんだからこそ、金より大事なものをわかっている。




ハナ肇時代の山田ファミリー、桜井センリの登場。クレイジーキャッツやっぱり他とは段違いで面白い。

寺尾聰もいい。山田組への参加は75年の『同胞』とどっちが先か。
調べてみたら寺尾聰って宇野重吉の息子なんだ…どうりで似てるなぁと思ったけど。親子共演かぁ。
山田洋次やっぱ役者に役を当てはめるの上手い。今回の寺尾聰見ててそう思った。父親知ってより納得、ほんとうはいいとこの坊ちゃんな役柄でピッタシじゃないの。

宇野重吉は『女の一生』の父親役が良かった。名優という感じだよな。

名優といえば大滝秀治、古本屋でのやり取りは何回見ても飽きない。
Dana

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