矢吹

かくも長き不在の矢吹のレビュー・感想・評価

かくも長き不在(1960年製作の映画)
3.8
かなり綺麗な映画。
序盤はロングテイクとロングショットで、街並みと市民の生活を写す。誰かにフォーカスすると言うよりは、人々の動き、街自体を見せる。音楽もかなり賑やかに使う。
さらにバカンスでの人々の移動、不在を対比させて、非日常を即座に作り出す。
そこからは、女主人の主観的なショットをいくつか混ぜていく。一人称に近い視点で進める。
ここでは、音も、ほぼ自然の音のみ。あとはオンのオペラぐらい。
まるで彼が本当に元亭主かのように見える。
さらに、親類を登場させてからは、三人称の語口に変わる。見ている側は彼が本物か、別人か、わからなくなる。
しかし、帽子を外し、2人で食事やダンスをすることで、彼女も周りの人々も彼を断定するも、
また、そこでは彼の焦りの方を際立たせる、周りの全員が動きを止めるショットで異様な雰囲気を作る。彼は錯乱し、ラストへ。
とても綺麗。流れるように視点を拡大縮小していく。同じ世界が何度も変化する。
またいなくなる彼。
終わり方も好きです。よかった。
いい終わり方をしなくて。本当によかった。
期待通りだぜ。
スッキリかつしっかりだ。

冬が来れば帰ってくるはずだ。
バカンス。夏は開放的になるでしょう。
劇中にも、私は他人だからよくわかる。みたいなセリフがあったりしたけど、
実際、恋は盲目であるのか、ないのか。
別に、自分に見えてるものだけで十分じゃない。
見えてないなんて、知らなくていいじゃない。
今回は彼が何者であるか、それはたしかにはっきりと見えてはいたけど、結局、現実は見失ってる感じだったな。
あれが、恋か、愛かはわからないけど、
大切なのは見た目か、歴史か、性格か、
記憶が戻らなくても、見た目が同じならいいのか。どうなんだろうね。

今回は映画見る前にあらすじ見てたから、とてもスムーズな構成として見れて良かったけど、あらすじ知らなきゃ謎が多いまま進行していくだろうな。それはそれで楽しいだろうけど。
普段はあらすじを見ないで、タイトルとビジュアルだけで決めて映画を見ることが多いので、改めて、どっちがいいんだろうな。
作り手としては情報ゼロからの方を想定してんのかな。人によるだろうけど。
と、どうでもいい話をここに刻む。
矢吹

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