矢吹

イディオッツの矢吹のレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
3.9
ドグマ2

自らの愚者たることに誇りを持つ。
このスタンス、諸刃すぎるのは、今もなお。
人がしっかり前に進むには、テクノロジーの速度が速すぎる。ってのに胡座をかくのもいいけど、そろそろ痺れが切れそうだぜ。
もちろん、人間存在なんて愚者で大いに上等なんだが、どんな名前の人にも平等に、より良い自分を目指す資格があるんだからさ。

そしてその諸刃で今回、主人公君達は、まんまと自分をぶった斬りに斬りを重ねまくってたわけですし。
そもそも、それも、目に見えた崩壊というか、
人はいつか死ぬぐらい、雨はいつか止むように、当然、終わりが来た宴会。
そりゃそうですよね。

石器時代に愚者たちは皆死んだ。
愚者たることが未来人であり、時代をリードしていることである。
知らないですね。

まやかしの生活ではなく有意義な生活をしたいんだ。
反中流階級思想ですか。桓騎将軍と同じやつでいいのかな。
ファシストどもめ?
やかましいですね。

ただ、めちゃくちゃ笑っちゃった。
特に、こいつは息子を触ってないだろ。のところと、実家に帰ってから修行の成果を存分に発揮した時の地獄の空気。
家で、気持ちよく声出して笑わせてもらった。
笑いと差別は表裏一体と言われる中で、ガッツリ裏側守備表示の下品な笑いではあるけど、至って真剣が故のシチュエーションが生み出す上品な面白さでもあるから、たまんないっすね。
あの2つのシーンで私は非常に評価をあげちゃう。

会社は宗教なり。から逃げ出した場所。
慰め合って足を引っ張り合うドロそのもののコミュニティ。
内なる愚かさに向き合う必要性は、あるけど、甘えんな。バカ。ではあるけど、
全くもって世の中や人のためになる信念もなければ、自分の中の確固たる向上心さえない、言い訳だらけの思慮の浅いイタズラっ子。ではあるけど、

おかげ様でか、この作品で、ラースフォントリアーの提唱するドグマ95ってやつの効果が、ここまですげえかってのは十分過ぎるほどわかるというか、モキュメンタリーとも違う、ちゃんとそんなわけない上手すぎる展開も待ち受けている。現実にしては、あまりにも面白い物語の流れがあるのに、この人たちが、自分と同じ社会に、今ここにある同じ世界に暮らしているという臨場感がどうしても抜けない。ドキュメンタリーだけが持っているはずの作品の強度をガチガチに感じる。
流石に、とあるお父さんが、ダンディーすぎたけどね。
あれはやりすぎ。

結局、自らも他人への身体的な偏見に、飲み込まれて、心が折れていく道筋や、どんどん、日常から、マズい時にはただの我が身を守る避難として、反射的に愚者モードを使い出したりする変遷も趣だらけ。

会社の上司のテンポと温度が、ドグマっぷり半端なくて、あそこだけはガチドキュメンタリなんですよね。きっと。
なんだこのミスは?わたしに恨みが?
みたいな怒り方とか。
日本にはないイメージだし、めっちゃ憧れるんだよね。
まあそれだって、ドラマで見た外国だけど。

とにかく、実際にあった、あるであろう、所謂ハンディキャップに対しての、社会の中の差別について告発する姿勢それ自体は間違っているはずはない。ただ、その方法が圧倒的に終わってる主人公と、そいつの周りにある世の中の人々も含めて、世界の全ての人間をちゃんと悪を孕むものとして、社会を語る方法は、どう考えても、さすラー。
矢吹

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