矢吹

i aiの矢吹のレビュー・感想・評価

i ai(2022年製作の映画)
3.9
1つの命が、どこで誰に何を残すのか。
やってくれたなマヒトゥ。
彼らの生活は明石で営まれたが、
音と光と風を通して、
こうして世の中の全てを包括した。
その世の中って言うのは、世の中やから。
全てでええねん。
ここまでご丁寧に、見せつけてもらえると、ありがたい話だ。
そして、最後の、スクリーンと客性を巻き込む暴風。
正直に言うと、反射のように、
少し、画面から目を切って、スカしてしまったのが、悔しい。
正面からぶつかりきるのが、絶対に礼儀だった。
その齟齬が、なんでだったのかと、考えてたんだけど、多分ね、画面の熱狂がライブすぎたのかもしれない、かも。音楽のね。
それは、すごくいいことで、むしろ好きな映画がよくやる手法でもある上で、
他人に、というか、同時代を生きてるはずの人様に、励まされてたまるかって言う気持ちが、まだ意地汚くも、体の隅っこにあるのが、本当にどうしようもない。心の底からあんまり思ってないのも、救いようがない。これは現状の自分のあらゆる情けなさから来るアレルギーだ。
とにかく、あの最後の締めくくりができるのは、生でお客様と仕事をしている人間だな、ちゃんと。と感じて、音楽を本気でやってる人ならではのモノを見られて、期待以上であり、まんまと予想以上に、あてられた。
結局、今までで1番喰らってるってことじゃん。

映像が頗る美しい。
赤色がちゃんとあるから、赤色の数だけ、テンションが沸るように調教される。
赤色はもうこれでもかと表現されるけど、
もちろん、そんなのなくてもすげえ絶景。
坂道というか、その土地に軸を預けた、斜めのカメラ。この映画には、明石という場所の神が宿ったと言うのが、平たくは正しい。
そして、このフィルムの、なによりも綺麗だった色が、さとうほなみさんの瞳の輝きだったこと。

この世の中の、質量保存の意味もわかる。
幸せに覚悟がいるかは、確かめてみる。
カリスマのカリスマたる本性に関しては、分かったフリをしておく。
空から海の匂いがしたら、迎えが近いんや。

暮らしを人質に取られたモノクロの労働に、色づく世界に生き生きと灯る、音楽も、7ミリも、恋の次も、きっと誰かに残っていく。
彼は、勝ったとか負けたとか、じゃない場所に行ったらしい。
確かに、人が生まれてから死んだだけですけど、その±0の間に、変換されてきた化学式、
その筆跡と熱とノートはたくさん積み重なった、人間1回目の人間ごっこ。

あいあいは、境界線を食べてくれる。
境界線を焼き尽くせ。と。
日本語の最初、あ、い、にも触れてたから、避けられないのは、地球の、太古、人の足跡か。
人の人生に速度はもたらす理科は存在しない。スピードはいらない。変身です。
因果応報もちゃんとしてるから、より、循環が始まる。永遠問題。
幸せなやつなんていないから。って話も当然。さよならはなくて、出会いを何度も続けたまえ。
これが、誰かのファンタジーやったらどうする?そんなわけないやろ。
そうならいっそ嬉しいけどなあ。

オーラ落ちたなあ、と言う概念が、この世にはあるんだなって。あるよな。
描いたってことは、投げられたってことだから、都合いいところを継ぎ接ぎ。悪趣味を善とする化け物。
時空を炸裂させる、この真空に時間はない、どんな感情でも織り交ぜていい、ぶつけなさいってさ。
なに言ってるかわからんけど、変人やから、なあ。
空から血出てたらしいし、いつか追いつけるように。がんばります。

だから、そのモノクロ世界は、絶対に音楽を志さなくても、志しても、灯せたはずやねん。
ただ、灯るよって言う、解答例。
矢吹

矢吹