佐藤克巳

日本のいちばん長い日の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
5.0
原作を超え戦争リアリズムに徹した橋本忍脚本、岡本喜八監督の、日本敗戦を決定づけた玉音放送までの緊迫の一日を克明に描いたポリティカルサスペンス映画の傑作。既に戦闘能力を失った海軍大臣山村聰と、本土決戦に戦力温存した陸軍大臣三船敏郎の確執で、ポツダム宣言受諾を巡る閣議決定が出来ず、総理大臣笠智衆は昭和天皇松本幸四郎に聖断を仰ぐ歴史的に有名な場面に感動するが、本作のドラマはそれからが佳境に入る。陸軍参謀の青年将校中丸忠雄、佐藤允、黒沢年男、久保明が主導し、黒沢が中谷一郎と共に血気に走り近衛師団長殺害を断行、偽の師団長命令を行使し宮城占拠、更に玉音盤を巡る攻防にハラハラドキドキ。特に黒沢の必死の形相は映画史に残る熱演で、高橋悦史の論理明解な上層部への訴えも迫力があった。さて、昭和天皇が崩御して平成・令和は敗戦に継ぐ敗戦を重ねているが、現在の政治家や官僚はどう責任を取るのか?
佐藤克巳

佐藤克巳