佐藤克巳

歌麿をめぐる五人の女の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

歌麿をめぐる五人の女(1946年製作の映画)
5.0
GHQ配下民間検閲支隊CCDのプレスコードを良くクリアしたなぁと思われる、戦後占領期の厳しい検閲に屈しない小津、成瀬と並ぶ溝口健二監督が、浮世絵師歌麿坂東簑助を取り巻く艶やかで業に深い女達を絢爛豪華な時代劇絵巻に仕上げた驚異的傑作。花魁行列で幕を開け、浅草難波屋お喜多田中絹代は、当代随一の歌麿に美人画で売り出され、銀座紙問屋倅にぞっこんだったが、その倅、歌麿が抜ける様な肌に刺青を入れた花魁飯塚敏子と駆け落ち。一方、幕府御用絵師狩野派門弟を放棄した小出勢之介坂東好太郎は許婚大原英子がありながら、松平邸腰元お蘭川崎弘子と駆け落ち。その腰元は、蔦屋、山東京伝、十返舎一九がもたらした噂の松平邸泉水の鯉の掴み取りで発掘した逸材で、その肉体に惚れ込んだ歌麿はお縄頂戴となった。お喜多は、倅の行方を追い連れ帰ったが、倅が江戸に戻った花魁とよりを戻した恨みで殺傷事件を引き起こす。それに刺激された歌麿は、手鎖から解放されると一目散に絵に取り掛かった。
佐藤克巳

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