竜平

ハンナとその姉妹の竜平のレビュー・感想・評価

ハンナとその姉妹(1986年製作の映画)
3.8
ニューヨークでそれぞれ暮らす三姉妹とそこに関わるちょい問題ありの男たち、彼らの人生模様を長女「ハンナ」を軸にして描いていく。ウディ・アレン流のラブロマンス的コメディ。

もう初っ端も初っ端から展開される登場人物の浮気心、このウディ・アレン節全開の導入でニヤけるのは俺だけじゃないよね。三姉妹のあれやこれやを描く内容ということで同じくアレン作品の『インテリア』を思い出すんだけど、シリアスだったそっちよりもこっちはもうちょいポップな印象。でタイトルにもある長女のハンナが一応物語の中心にいるんだけども、しかしそこまで大々的に彼女自身のことはフィーチャーせず、妹二人や他に焦点を当てていく構成はなんとも変化球。出演がマイケル・ケイン、ミア・フォロー、しれっと出てくるマックス・フォン・シドーにキャリー・フィッシャーに、妹役には『運び屋』などのダイアン・ウィーストや『インシディアス』などのバーバラ・ハーシー。みんな本当に、若ーい。アレン演じる脇役の男、病気恐怖症から始まるそのクセありの性格が滑稽で立ち位置も絶妙、とまぁこれは置いとくとして。夫婦間やら愛人関係やら、思うようにいかない人生やら、それらゴタゴタを群像劇、会話劇の様相でテンポ良く見せつつ、相変わらずの拗らせ展開で終盤にはあっちへこっちへ行ってた男女の事情、恋愛模様が気持ちいい感じで収束してくれる。物事の解決というよりは一つの「答え」的なものにたどり着く、三姉妹のこととアレン扮する脇役の物語が、わるい意味では決してなく「上手く」まとまっていくのが見事。

嫉妬や心配事や後悔など内にある想いを所々ナレーションで自身が語っていく演出もおもしろい。気の迷いだったり魔が差したり、そういった一時の“良からぬ”揺らぎというのは人生に於いてやっぱりあるもんで、たぶん人間ってそーゆーのにどうしようもなく惹かれてしまうとこがあるんだろうね。でも結局のところそこに本質はなくて、一旦冷静になって一歩引いて見ればわかるって話。シニカルでありつつどこかポジティブにも見せてくれる、ストーリー運びと構成に魅了される一本、かな。
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