映画男

弓の映画男のレビュー・感想・評価

(2005年製作の映画)
4.0
老人と16歳の少女が船で二人暮らしをしていて二人は少女が17歳になったら結婚する予定。という、無茶苦茶アナーキーな設定の物語。映画は終始、海に浮かぶ船上で繰り広げられる。

結局、老人の思うようには事が運ばないわけだが、そもそもなぜこんな映画撮ろうとしたのかという疑問が湧く。老いた男の性欲・支配欲の醜さを描こうとしたのだろうか。あるいは儒教を皮肉っているのか? 千切れた韓国の国旗が掲げられていることもあり、それはあながちあり得る解釈ではあるとおもう。とはいえ、観終わって思うのは、純粋にこういう物語を思いついて、それを描こうとしただけのような気がする。

なんせ、ひたすらに虚しくて、美しい映画だったから。行き場のない老人がただ一つ大切にしている少女という存在が失われようとしているとき、それは側から見て当然の成り行きであると思うのだが、宿命に抗おうとする老人の虚しさは見苦しくも同情せざるを得ないものがある。で、そこで揺れ動く少女の感情もまた美しい。

解釈をすればするほどこの映画の本質から外れる気がする。ただキム・ギドクの作り出したカオスで美しい世界に浸る。それで充分じゃないか。
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