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HEROのtakのレビュー・感想・評価

HERO(2002年製作の映画)
4.2
 これは傑作。ワイヤーアクションが芸術となった映画だ。劇中のエピソード毎に色彩が変化する映像美にとにかく魅了される。チャン・イーモウ映画は色が印象的なものが多いが、本作では撮影にクリストファー・ドイルを起用したことで、それはますます美しいものになった。画面に映る紅葉一枚一枚まで吟味したというマギー・チャンとチャン・ツイィーの対決シーンは、何度でも見直したい。

 それにしても、ドニー・イェンとジェット・リーが雨の中対決する場面のかっこよさ!。盲目の老人が弾く琴は、まるでワイルドなスライドギターのようだ。あの老人はライ・クーダーかっ!。二人の武術家スターが共演するのは「天地大乱」以来、というからその筋のファンには堪えられないものだろう。でもワイヤーアクションやSFXが昔よりも一般的になり、演じる役者の技能が果たしてどこまでなのかわからなくなっているのも、今の現実(何せハリウッドではドリュー・バリモアまでもがカンフーアクションをやる時代だし)。それはこの場面でも残念ながらそうなのだ。それがちと悔しいところだなぁ。リー・リンチェイと名乗っていた武術チャンピオン時代のジェット・リーを知ってる世代だけに。

 観ている我々は始皇帝が殺されないのを知っている。だから暗殺者である主人公らのうち誰かが止めちゃうんだろうなぁ、とどうしても想像してしまう。その想像は的中することになるのだけれど、想像すらできなかったのは始皇帝の強さ。英雄的行為とはよく言うけれど、真の英雄とは何なのか?それを考えさせられる。勝手な思い込みかもしれないけど、黒澤映画の影を感じた。語られるお話が二転三転するのは「羅生門」、あの騎馬兵や兵士たちは「乱」、それに大量の矢で射られるラストは「蜘蛛巣城」。
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