AONI

無宿 やどなしのAONIのネタバレレビュー・内容・結末

無宿 やどなし(1974年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ひと夏の儚い夢。復讐の虚しさ。詩情豊かな田園と海岸の風景美は絶筆もの。男二人のでっかいロマンに、薄幸そうな美女、梶芽衣子は少し蚊帳の外。

元ネタはまんま『冒険者たち』。しかし、斎藤耕一監督の日本映画らしい詩情豊かな映像美と、「お礼参り」という任侠世界の要素を取り入れた脚本によって、見事に純和製『冒険者たち』として消化しきっている。

『子連れ狼』『御用牙』等、アナーキーな作風という印象が強い勝プロが、こういう作品を製作したことに驚き。製作者勝新太郎の守備範囲の広さを感じた。

詐欺師まがいだがお人好しの勝新太郎&あくまでストイックな高倉健さん&純真無垢(悪く言えば白痴っぱい)梶芽衣子のコンビも素晴らしい。海に憬れる梶が歌う唱歌「われは海の子」も印象的。

男二人が海岸に座り宝を捜し出した後の夢を熱く語る中、少し不満気に彼らを遠くから見つめる梶芽衣子。何を思いたったかスッポンポンになり海に!!健さんも勝さんも呆気にとられて立ち上がって見つめるロングショットがたまらなく素敵です。

最後に男二人が死んでしまうのは、ああいう終わり方しかないのかなとも思うが、少し残念な気がする。梶芽衣子だけでも幸せになってくれと祈るのみ。
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