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スパイダーマン2のnetfilmsのレビュー・感想・評価

スパイダーマン2(2004年製作の映画)
4.1
 アメリカ・ニューヨーク、香水エヌ・ローズのビルボード広告を感慨深そうに見つめるピーター・パーカー(トビー・マグワイア)の姿、広告に写るメリー・ジェーン・ワトソン通称MJ(キルスティン・ダンスト)の輝けるポートレイト。ミッドタウン高校を卒業し、無事コロンビア大学の物理学専攻に合格したピーターだったが、学業とアルバイトとヒーローとしての両立のバランスに悩める日々を送っていた。ようやく見つけたピザ屋の配送のバイト、この店は必ず29分以内にお客様の元にピザを届けることを絶対とする店だった。だが配達の道中、強盗団を見つけたピーターはスパイダーマンに変身し、悪を挫く。しかしその代償として職をクビになった男は、物理学の授業でも徐々に単位を落としていた。メイおばさんの部屋に戻った失意のピーターの前で行われたサプライズ・パーティ、誕生会の主役は意中のMJと大親友のハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)に祝福される。庭先にゴミを捨てようとするピーター、背中に感じる熱視線、駆け出しの役者だったMJの初めてのブロードウェイの舞台に必ず駆け付ける約束をし、2人は別れる。一方その頃、ハリーは失脚した父親ノーマン(ウィレム・デフォー)に代わり、オズコープ社の上役にまで登りつめていた。彼は社運を賭けたトリチウムを用いた核融合プロジェクトの総責任者として、ノーベル化学賞も視野に入れる存在にまで成長していた。「もう1人の天才がいるから」とハリーに声を掛けられたピーターはある夜、天才科学者オットー・オクタビアス(アルフレッド・モリーナ)に出会う。

 マーヴェル映画とサム・ライミの『スパイダーマン』トリロジー第二弾。前作で成就したかに見えたピーターとMJの仄かなロマンスは相変わらず振り出しに戻り、モラトリアムな現実に苦悩する姿は、とてもスーパー・ヒーローものとは思えない展開を見せる。英雄もマスクを取れば貧乏な苦学生という悲しい現実、一向に上手く行かないロマンス、そこにサム・ライミはスパイダーマンとしての能力の衰えと、親友ハリー・オズボーンの父親を殺めてしまった葛藤とを巧みに取り入れることで、ドラマ・パートに重厚さをもたらす。我が物顔でNYを跋扈したスパイダーマンの内面を襲った僅かな狂いが、やがてスーパー・ヒーローの存在そのものを否定しかねない重要な事態となる。相変わらずサム・ライミは半径数百m以内のシンプルな物語と人物関係の中に、大きな物語を流し込むのが上手い。煮え切らない両思いのロマンス、前作よりも洗練を増したキルスティン・ダンストの移り気な女心と秋の空、トビー・マグワイアの内面と代父だったベン・パーカー(クリフ・ロバートソン)への思い、それと合わせ鏡のように終盤再登場する父ノーマンと息子ハリーの葛藤など、本来なら活劇パートに添え物のように付随するドラマ・パートが今作は抜きん出て完成度が高い。前作で主人公に善と悪の倫理観を促したJ・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)とその息子ジョン・ジェイムソン(ダニエル・ギリーズ)の起用も効いている。前作のウィレム・デフォーに比べると、アルフレッド・モリーナの怪演はやや役不足な気もするものの、メイおばさん奪還作戦の高低差のある3D的な活劇、クライマックスのNYを激走する列車でのアクションの説得力はシリーズ屈指の魅力を放つ。
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