シネラー

ゴジラのシネラーのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
4.5
日本特撮映画の原点であり頂点とも
言うべき、シリーズの第一作。
『ゴジラVSコング』に備え、
久しぶりに鑑賞。
当時の時代背景を描写しつつ、
原水爆に対するメッセージを込めた
素晴らしい映画だと思う。

水爆実験によって目覚めた
怪獣ゴジラが東京へと進撃し、
それに対抗する人間模様が描かれるが、
その随所に戦後を感じさせる
時代背景を写している為、
歴史的な価値も高い作品だと思う。
本作のゴジラに関しては、
人々にとっては絶望を与える災害として
畏怖的に描かれており、
その被害に遭う市民描写には心苦しい
ものがあった。
そして、その特撮技術が戦後9年という
期間で製作されたとは思えない、
素晴らしいクオリティの上、
モノクロの絵面が合っていて良かった。

そのゴジラを引き立てる
人間ドラマも見応えがあり、
主要人物達の三角関係や
芹沢博士(平田昭彦)の葛藤は生々しさ
を感じさせる位に濃厚な内容となっていて、
飽きる事がなかった。
後に『シン・ゴジラ』で、
"私は好きにした、君らも好きにしろ"
という文句が登場するが、
劇中最後の芹沢博士の行動が
正にその言葉に当てはまると思った。
世界の為やゴジラを倒す為ではなく、
自身の生きる世界を憂いての
エゴ的な行動と解釈でき、
自己犠牲という単純なものではないと
思えてならなかった。
だからこそ、山根博士(志村喬)の最後
の発言に重みが出ていると感じられた。

メッセージ性の高さから、
他のゴジラ映画と比べても別格と
言える作品だと思う。
怪獣映画を観るというよりも、
戦争映画を観るのに近い感覚になる
類を見ない傑作だ。
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