イチロヲ

私は告白するのイチロヲのレビュー・感想・評価

私は告白する(1953年製作の映画)
3.5
殺人犯の懺悔を聞き入れた若い神父が、警察の捜査と完全犯罪の板挟みに遭い、容疑者として担ぎ出されてしまう。殺人事件の捜査に巻き込まれた聖職者の葛藤劇を描いている、サスペンス・スリラー。フランスの戯曲をベースにしている。

聖職者の特殊な立場を利用した完全犯罪劇。神父に濡れ衣を着せる作戦であることが冒頭部で明示されるため、犯人捜しの物語ではない。危機的状況に置かれた神父がどうなってしまうのか、そのドキドキを楽しむための作品。

神父が聖職を全うすればするほど、数珠つなぎで怪しさ満点の人間関係が露呈。擁護するヒロインが神父の代わりに真実を告白しても、結局ボロが出るという負のスパイラル。「神父よ、早く告白してくれ!」という焦燥感を煽るための演出が冴え渡っている。

頑なに口をつぐむ神父にイライラを感じなくもないが、懺悔すればギリギリセーフという「ソコが変だよキリスト教」を風刺した内容になっているところが面白い。変なものは変だと言えるほうが健全ではないか、という思いが湧いてくる。
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