荒野の狼

格闘技世界一 四角いジャングルの荒野の狼のレビュー・感想・評価

2.0
「格闘技世界一 四角いジャングル」は1978年の映画であるが、注意したいのは続編にあたる1979年の「激突!格闘技 四角いジャングル」と重複する映像が多いこと。良心的ではなく、特にベニー・ユキーデの試合は大部分が重複している(他に坂口征二と上田馬之助の乱闘など)。本作には、アントニオ猪木がブラジルでの青年期について回想する場面があり、ブラジルで本人が当時の作業を再現している。2023年の映画「アントニオ猪木を探して」では、ブラジルに事前の取材もなくプロレスとは無関係の人物が農園跡地を訪れる映像があったが、本作の映像を使用するなどできなかったかと思うと惜しい。本作は、多様な格闘技を収録したという形式にしたかったのか、相撲とボクシングも含まれているが内容がお粗末。相撲は高見山の稽古風景で、富士桜のテッポウ、長岡(後の朝潮)が高見山とぶつかり稽古をする映像が収録。ボクシングは、世界チャンピョンだった藤が、キックボクシングに転向して行った二試合の映像が使用されているが、藤が力道山の設立したジム「リキボクシングジム」出身であることは語られておらず、また二戦目の結果は惨敗したかのように誤ったナレーションがついており、藤には失礼な内容。
アントニオ猪木の試合は、モハメドアリ戦、ザ・モンスターマンとの二戦目(テレビ放映された第一戦とは異なるので貴重)、アンドレ・ザ・ジャイアント戦(アンドレがキーロックされたまま猪木を肩に担ぎ上げた試合)、タイガージェットシン(NWFヘビー級戦)を収録。アンドレの巨体は魅力で、ダイビングヘッドパットを連続してみせるなど、収録されている試合での動きはよい。
他に異種格闘技戦として、坂口対ランバージャック(全米プロ空手)、ウイリアム・ルスカ対バッファロー・アレンの柔道メダリスト対決(ルスカがアキレス腱固めで勝利)の一部が収録。アレンは後に、バッドニュースアレンの名前でプロレスに転向し、新日本プロレスに度々来日。人種差別的発言をしたアンドレに抗議をして、アンドレに謝罪をさせた話がある(ちなみに、週刊プロレスに2002年に掲載された話と、現在YouTubeで視聴できる本人のインタビュー「Best of Shoot Interview」では内容が異なる。後者は、スタン・ハンセンが仲裁しようとしたこと、アレンとアンドレは以後絶縁状態になったが、アンドレの死の前に和解したことなどが語られておりファンには嬉しい)。
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