トラベラーのんぎのレビュー・感想・評価

目的が完遂されなかったがゆえにもはや移動そのものがこの映画のすべてといって差し支えないのだが、停滞を拒みながら狭い歩幅で縦横無尽に駆けまわるさまが通奏低音のようなリズムを生んでいてふしぎと飽きない。疲れ果てたその小さな身体を運ぶ乗りものが既知と未知の空間を接合する、あまりにもラディカルで映画的な作法はしかし、すでに才気走った省略のセンスによって驚くほど流麗に映る。子どもの目線で見た知らない土地の夜景は誰しもがそうであるように、かの少年もきっと一生忘れないだろう。