ギズモバイル

十二人の怒れる男のギズモバイルのネタバレレビュー・内容・結末

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

≪ざっくり評価≫
模範的な陪審員制度マニュアル。
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総合評価 (/6) ✩ 3.7
シナリオ 4
総合演出 3
独創性 4
完成度 5
心理効果(*2) 3
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≪突っ込んだ感想≫
陪審員制度が最大限上手く機能したケースを見せてくれるので、凄く教養になる。日本でも似たような制度が導入されてるので、白羽の矢が当たった人には超オススメ。まあ私は作中数名出てくる性格も頭も悪いレイシストみたいな人達がいらっしゃる職場なので選んでもらっても参加できる自信は無いが…。

圧倒的有罪な状態で一人の男が大した根拠もなく無罪を主張したことから始まるのだが、「人の生死を決めるのに5分は短すぎる」という主張だ。ああ、これは全然論理的じゃないが、久々に心に響く言葉だ。作中の自分が賢いと思い込んでいる馬鹿は最初から全力で「議論の余地なんてねーよ!」と相手を威嚇して意見をねじ伏せようとするが、主人公はそういう輩も含めて、自分もまた無知な一人だと弁えているからそういう考え方ができる。そう、映画でもそもそもの発端はデタラメな証人と無能な弁護士で、陪審員12人は結局(敵も味方も)知恵を出し合ってその無能さを補填しているだけなので、突き詰めれば無知な人間同士、皆力を合わせて知恵を出しあおうぜ!というのが陪審員制度の本質なのだろう。

ともかくこれで一人のヤンキーが救われた。それが真実に沿うものかどうかは解らないのがまた良いが、「疑わしきは罰せず」の法則に則るならば、正しい結論だったのだろう。

≪蛇足≫
個人が意見を述べる際はほぼ例外なくバイアスがかかっているので、真に客観的な意見なんてまず聞けないけど、主人公は極めて客観的に見える。しかし結局それも突き詰めれば「客観性バイアス」とでもいうものがかかってるのだろう。要するに、極悪無比なサイコパスがたまたま冤罪で裁かれる場合、社会のためには濡れ衣着せてでもそいつを電気椅子に座らせたほうが正解なのかもしれないが、本作主人公はおそらくそれを許さないはず。その場合は、この映画のような美談には終わらないだろう。話としては非常に面白くなるだろうけど。