ギズモバイル

ヨーロッパ新世紀のギズモバイルのネタバレレビュー・内容・結末

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

劇場鑑賞。

「言葉を失った少年が見たものは何なのか?」というミステリアスな伏線に沿って、社会不適合者のクセに何故か美人の嫁さん&美人の愛人に恵まれてる主人公にイラつきつつも、人種問題最前線とも言える環境のルーマニアの実態を垣間見る事ができる良作。

つくづく思うが、日本は平和だ。戦争や侵略をリアルで体験した人なんてほぼ居ないし、人種差別を受ける機会もまず無い。そして何より生存自体がイージーモードだ。

先日鑑賞した福田村事件や、昨今急展開のパレスチナ問題もそうだが、差別問題とは突き詰めれば生存問題であり、宗教・人種なんかはファクターのごく一部でしかないし、成熟した大人で娯楽的感覚で弱者をいたぶるような差別主義者なんてのは(警察以外は)ほぼ無視していい程度の少数派だと思う。

コミュニティ全体が裕福ならば、はっきりいって差別なんて生まれる余地が無い。経済的恩恵にあやかって似非人道主義者と化している大半の日本人ならば実感できる部分はあるはず。「金持ち喧嘩せず」にも通ずる現象であり、普通の生物ならば自身の生存権が脅かされてもいないのに、わざわざ敵を作って自らの生存権を脅かす愚行は避ける、といった理屈。

本作でも経済的に裕福な層が、(利害関係も相まってとはいえ)人道的な立場に立っていて、排斥派の村人が、長回しカット(偉業!!)の議論が白熱するにつれて、ルサンチマン丸出しになっていくのは極めて示唆的だ。本質的な人間性というよりも、ポジションに拠るものが大きいと思う。

人道主義の塊に見える主人公の愛人だって、生存権が脅かされるポジションなら怪しいものだし、自身の生存権を無視して人道主義を貫くのも、生物として間違ってるような気がしないでもない。

中東のイスラム教徒内の派閥争いでアラブ人同士殺しあってるのだって、よくよく調べてみたら利権が絡んでいたりするし、日本人が在日朝鮮人を虐殺したのだって、結局勘違いした自己防衛だったり、日本人自体がどん底に近い生活を送っていたからだろう。

即ち、差別というもの自体は実態を持たず、「不遇」の副産物でしかないので、差別を無くしたいなら全体の幸福値を底上げすれば解決だし、恐らくそれしか方法は無いのだけど、差別を歓迎する人も一定数存在し続けるので今後も人類が抱える永遠のテーマで有り続けるだろう、とエンディングのクマー達を見ながら実感した。コカインベアといい、クマブーム来てるのかな?