足らんティーノ

十二人の怒れる男の足らんティーノのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.8
「どんな場合も個人的偏見抜きで物を考えるのは容易じゃありません。偏見というメガネは物事の真実を見えなくさせてしまう。」

表紙はカラーだったので、ついカラー映画だと思ったら、1957年の白黒映画でした。これもちょっとした偏見かなー

さて、内容的には、どんでん返しも奇抜な展開もない硬派な映画です。(吹き替えで観るとこういう話し方がうつるw)
終始ひとつの部屋で12人の陪審員の男が話す会話劇だけで、事件現場やそれに付随する場所がありありと想像できるし、劇中で雨が降ってきて、映画が終わるまで、現実に外でも雨が降っていると思ってたほど引き込まれる、まるで落語みたいな映画。
時間も95分と短めだし、内容も難しくないので、構えてみなくても大丈夫です。



《以下ネタバレ》
気になった点は、主人公は最初、小さな確率に注目して有罪であるとは言い切れないと言った。しかし、終盤みんなの意見が変わってくると、一般的に言って可能性が高いという大きな確率に注目している(メガネのシーン)。大きな確率に注目し、あとの可能性を排するのが偏見である。1番上に主人公の発言を引用したように、主人公もまた論戦が有利になった瞬間、最初自分がそうされたように偏見を押し付けるのである。(可能性だけいえば、女性が眼鏡をかけていたことは有り得る)
終盤の論点をもう少し丁寧につめていけば、エンタメに堕しなかったように思う。
しかし、そうはいっても、まとまりもよくだれ場もなく、緩急あって、控えめに言っても傑作。
白黒なのに古臭さを全く感じない。

そもそも裁判、というか社会というのは偏見なしでは成立しない。
意図してかしないでか、もうひとつメタ視点に立って深読みすると、かなり深度の深い映画だと思う。
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