校長の娘マリーは農園主の息子ジャックと共に生まれたばかりのロバに"バルタザール"と名付け可愛がります。
しかしジャック一家は引っ越し、バルタザールも別の飼い主に引き取られることに…
それから数年後、鍛冶屋の労役に使われて苦しさに耐えかねたバルタザールは逃げ出しマリーの元へ…
その後も次々と人から人へと渡り歩くことになります…。
自堕落な不良グループの少年たち…。
自暴自棄になって八つ当たりする浮浪者…。
そして唯一愛情を注いでくれたマリーまでも…。
バルタザールは何の抵抗も出来ずにただただ彼らの仕打ちに耐えるのでした。
1番観ていられなかったのは、路上で立ち往生してしまったバルタザールを歩かせようと不良のジェラールが尻尾に火をつけたシーン……痛まし過ぎます…。
ブレッソンの描く人間には殆ど表情がありません…そして彼らの肉欲、強欲、暴力…(七つの大罪)をとことん容赦なく露呈します。敢えて無垢なロバを主役に置いたことが見事…ロバは人間の欲を映し出す鏡のようにも思えます…。
あまりにも悲惨で哀しい物語ですが、それ故にバルタザールがとても美しく神々しいです。