たく

ガッジョ・ディーロのたくのレビュー・感想・評価

ガッジョ・ディーロ(1997年製作の映画)
3.6
ロマの歌を求めて彼らが住む村を訪れたフランス人青年と現地住民の交流を描いてて、暖かい交流の様子を見てほのぼのしたと思ったところで最後に急展開となり、何とも言えない気持ちになった。タイトルの「ガッジョ・ディーロ」はロマの言葉で「愚かなよそ者」という意味で、最初はロマ達がステファンをからかう言葉として出てくるんだけど、最後に彼が本当にそうなるという話。調べると、作中にロマとして登場する村の住人達は全員本物のロマなんだね。

父の形見のカセットテープに録音されてた歌を歌うノラ・ルカに会いにロマ達が住むルーマニアの村にやってきた青年ステファンが、気の良い酔っ払いの老人イシドールに無理やり自宅に引っ張り込まれて酒を飲まされ、これがきっかけで言葉が通じないステファンが村に受け入れられ、次第に交流を深めていく。ロマ達はいつも歌って踊ってとにかく陽気で、そのうちステファンが気性の激しいサビーナと仲睦まじくなっていくのが微笑ましい。

ステファンの目的である歌手は結局見つからず、代わりに現地人が奏でる音楽をカセットテープに収録していくのと並行し、ステファンがイシドールに言葉を教えてもらいながら少しずつ意思の疎通ができるようになっていくのが、言語学習のリアルな現場を見ているようだった。いい加減終盤まで酔って騒いでの賑やかな様子が続き、警察に捕まってたイシドールの息子が釈放されて戻ってくる歓喜の場面から、イシドールのサビーナに対する発情に苦笑したところで急転直下の展開がやってくる。村にすっかり馴染んだように見えたステファンが、結局はロマの置かれた立場を何も分かっていなかったことを思い知り、録音したカセットテープをすべて壊して墓の傍に埋め、弔いの踊りをする。悲しみに満ちた幕切れなんだけど、サビーナの笑顔に救われた。
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