けー

リコシェのけーのネタバレレビュー・内容・結末

リコシェ(1991年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

こんなデンゼル先生みたことない!
たぶん...たぶんなのだけれどデンゼル・ワシントンの役者魂の針の振り切れ度合いでいくとこれがダントツなのではないかと。
この時の役者としての挑戦がいい具合に昇華され、「トレーニングデイ」につながったのかなとか勝手に思ったり。

1991年にリリースされた作品ということで、撮影したのはデンゼル先生が30半ばの頃でいいんだと思うのだけれども、体当たり的にどんなことにも挑んでいる感じがありありとほとばしっていて、この頃のデンゼル先生はまだ演じることに何らかの挑戦を見出せる楽しくてしょうがない時期だったのかなーなんて思ったり。



あらすじはこんな感じ。

 
制服警官のニック・スタイルズは警官の仕事をしながら夜学に通って法律の勉強をしている。ある夜、相棒のラリーとパトロール中、ギャングの取引現場に遭遇し、その内の一人が移動遊園地に逃げ込み、人質をとるが、ニックの機転で無事に逮捕。

ニックはこの事件をきっかけに相棒のラリーと私服刑事に昇進し、大学も卒業して結婚、減税は検事補として忙しい毎日を送っていた。
一方ニックに撃たれ逮捕されたブレイクはニックへの恨みを日々募らせており、刑務所の中で

ニックに復讐することばかり考えていた。そしてニックを貶める計画を入念にねり、準備がととのったところで脱獄し、自分の死を偽装する。


ブレイクが憎しみからニックに執着し、ニックをただ殺すのではなくニックの名誉をことごとく汚していくという実に陰湿極まりない手口でニックを追い詰めていく。

検事補で地域の人々から愛され、上司や同僚からも好かれて将来を嘱望されまくっているニックをブレイクは拉致って麻薬漬けにして拷問したあげく雇った娼婦をつかってレイプし、その時のビデオや写真を利用してニックの名誉を地に貶め、自分はハメられたんだと訴えつづけるニックの正気を周囲から疑わせるように仕向ける。

ニック当人さえもだんだんと自分の正気を疑うぐらいにおいつめられていく様子はなかなか凄まじい。

ニックがハメられたことを最初から疑いもせず真相をつきとめようと動いてくれた相棒も罠にはまって殺されてしまい、その容疑もニックになすりつけられてしまう。
自分の無実と正気を信じてくれる存在がついに一人もいなくなってしまった絶体絶命のこの窮地をニックはどう切り抜けるのかというサスペンスで、もうひやひやしながら最後まで緊張しながら見入ってしまうのだけれども...。


見ながらオロオロしてしまうのは、「こ、これやっちゃって大丈夫なのかな???」という、まぁ大部分は私の小心からくるオロオロなわけなのだけれど、例えばニックを演じているのが新人だったり売れる前の白人の俳優さんなら「売れる前はいろんなことやらされて大変だなぁ」ですむ感想が、ニックが鎖につながれたりすると「こ...これって...大丈夫なの???」とニックのピンチ以外の理由でもオロオロしてしまう。
そういう発想をする私こそがレイシストじゃねーのか??とかもう大混乱。
こういうことでいちいちオロオロしなくてすむようにこの機会に勉強しておかねば。
そもそもこういうのは私の不勉強からくるオロオロだし。


最終的にニックの救いの手となったのが幼馴染でギャングのオデッサ。

お互い意見が合うことはなかったけれど、決して裏切ることはしないいわば”from the hood"者同士の仁義というか絆というか。

ここぞという時に信頼できるのはやっぱり”from the hood"のブラザーだよね!

なんて熱くなれたのは、ここ最近の勉強の成果ということにしておこう(たぶん知らなければ、そのあたりの絆がよくわからなかったんじゃないかという気が...💧)。

そういう展開だったので、なんというかこの映画の監督や脚本を書いた人たちがアフリカン・アメリカンの人たちの思いにまったく無配慮だったっていうこともなさそうだよなとか思ってほっとしたり...(←我ながら脆弱すぎる判断基準💧)。


にしても、どういう成り立ちなんだこの映画はー???とかるーく検索かけてみた。
そしたらこれ、もともとは「ダーティハリー」シリーズ用にかかれたシナリオだったそうだ。
しかし、「これじゃーあまりにもダーティすぎんだろう」とクリントン・イーストウッド先生が却下。
でも、プロデューサーのジョエル・シルバーなどが加わりり、もう一度「ダーティハリー」として立ち上げようとするんだけど、結局実現せず。

で、それがどういう経緯でそうなったのか詳しい経緯はわからないけれども「そういえばアフリカン・アメリカンが主人公のアクションヒーローもののフランチャイズってないからつくりたいよねーっ」て話になったらしい。 

オデッサ役にラッパーのアイス・Tがキャスティングされていて、彼がこの映画について語っているのをちょっとだけ見つけられた。

俳優業に興味は当時まったくなかったけれども、この映画のオファーがきた時にデンゼル・ワシントンがキャスティングされているときき、こういう話がくるのはめったにない機会だし、これをきっかけに他の仲間たちが進出するいいきっかけになればいいとオファーを受けたとか。


監督はシナリオが気に入らなかったので撮影する前に脚本をいろいろ手直ししたそうなのだけれども、その時デンゼル先生にもいろいろ相談にのってもらったそうなので、どこまでなら大丈夫かどうかということなども相談していたのかも。

試写段階であまりにも暴力的すぎるということでニックがブレイクに暴行を受けるシーンはだいぶカットされたそうな(ってことは俳優さんたちはやったってことだよな...)。

撮影中、監督は常に俳優さんたちのメンタル面を気にかけていたそうでヘビーなシーンの撮影のあとには「役の感情を家に持ち帰るなよ」と常に気遣っていたそうな。

デンゼル先生もテナントさんも針を振り切った演技をする時、信頼できる監督のもと「safe hand」に委ねているので何の問題もないっていう話をインタビューでよくするけれど、きっとこの映画もそういう環境だったってことなんだろうな。

ブレイクを演じていたのがジョン・リスゴーという俳優さんでこの方もブロードウェイの俳優さんだし相手役として十分安心できる相手だったのかなーなんて。

役者として体当たり的にすっごくがんばってる感がすごいデンゼル先生が見られる貴重な一品ということで〜

にしても、この後ニックはどんな人生を送ったんだろう。

弁護士かな。
ソウル・グッドマンみたいな感じの...🙄
けー

けー