しろくま兄サキス

紅の豚のしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
4.0
【控えめに言って、映画好きなら嗜み】
もしかして宮崎作品でもっともメッセージ色が強いかも。
舞台は第一次世界大戦後のイタリア。長引く不況とファシズム化への波が押し寄せ、決して明るい未来が予想されるとは言えない時代。乗り物は飛行艇。もはや時代遅れと知りつつそのメカニズムを愛でる。監督と同世代の主人公は、若い世代の台頭に、畏れやあこがれと同時に、まだまだ若い者には負けん!という反発心が。監督が自分自身のために作った作品。

さて、何年かぶりに地上波鑑賞。よく見るとなにげにこだわりのいい絵づくりしてるなぁと思いましたよ。中盤、トレーラーのフィオと運転を代わったポルコ。追っ手を振りきる際、過重を車体の左側に寄せるためにいったんハンドルを左に切ってから右に回す演出は、宮崎アニメならではの乗り物の運動力学と荷重移動表現。振り回されるトレーラー部分の遠心力と重量感が抜群にイイ。その他フライホイールを回すクランクの抵抗感とか、エキマニからほとばしるバックファイヤーとかの描写が実に嬉しい。賛否両論の物語ではありますが、大部分の作画陣も訳が分からなかったであろうこういうディテールをキチンと描いてくれたことには素直にありがたがりたい。