Inagaquilala

トレインスポッティングのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
4.0
「T2 トレインスポッティング」の先行上映を観る前に復習観賞。もう20年前の作品なのだなと、あらためて妙な感慨が湧く。自分も若かったが、ユアン・マクレガーも若い。

「スコットランドでいちばん汚いトイレ」で便器にユアンがダイビングするシーンはいま観ても新鮮だ。この後、監督のダニー・ボイルはハリウッドにリクルートされて作品を撮るのだがが、やはりこのイギリス時代の第2作目が圧倒的にキレている。

オープニングの、イギー・ポップの「Lust For Life」をバックに、ユアン扮する主人公のレントンとスパッドが走ってくるシーンは、いきなりこの作品の鼓動を感じさせてくれて、掴みとしては最高なのだが、観直してみると、これはビートルズの映画「A Hard Day's Night」の冒頭と一緒ではないか。そういえば、作品全体のカラーの色調も、同じくビートルズ映画の「HELP!」と重なる部分がある。

どちらのビートルズ映画もイギリス(出身はアメリカのペンシルヴァニア)の職人監督リチャード・レスターの作品だが、かなりその2作品からの影響があるのではないかと感じた。結構多用しているカットとカットの唐突なつなぎも「HELP!」に似たものがある。

ということで再観賞したのだが、やはり素晴らしい。青春群像劇の名作だ。とにかくいま観ても新鮮だ。便器へのダイビングシーンはもちろん、レントンがヘロインを絶つために格闘する際の幻覚シーンなども、とにかくエッジの効いたみずみずしい映像が展開する。

それとシーンについても、説明めいたものは極力排して、ヴィジュアルとリズムを大切にしながらカットとカットを組みあげていく。ドラッグを題材にした映画なのに、観ていて小気味良いのは、そのような独特な場面転換にあるように思う。当時は、それほど気づかなかったのだが、そんな隠しアド的な試みも秘められている。

舞台はスコットランドのエディンバラだが、ちょうどこの頃、自分もこの街を訪ねていて、背景にある閉塞感は自身も肌で感じていた。それらの空気感もうまく取り入れて、この独特のリズムで展開される青春群像劇に見事なスピリットを吹き込んでいる。

物語は、シンプルに言えば、ヘロイン中毒の主人公が何度もそこから抜け出そうとするが、仲間たちに足を引っ張られなかなか抜け出せない。一念発起してロンドンで正業に就き、更生をはかるのだが、そこにも犯罪を犯して逃げてきたベグビーやシック・ボーイたちが追いかけてくる。仲間との現在を取るのか、自分の未来に賭けるのか、いわばどこで彼が自らの去就を決めるのかが物語の焦点なのだが、最後まで自分の描いた期待は裏切らない。

そして、「T2 トレインスポッティング」では、その20年後が描かれるというから、期待は高まるのだが、はて。
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