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アメリカン・ビューティーのpikaのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
3.5
面白かった!
ケビン・スペイシーが娘の同級生に欲情して云々って聞いて全く見る気が起きず、なぜオスカー受賞作なのか、なぜ10年以上経っても「#私の好きな映画」の中に入るのか、なぜ名作と呼ばれているのか、かれこれ10年以上気になって見ようと思ってずっと頭にあったのに見てなかった「アメリカン・ビューティー」を今、やっと見た!やっと見たぞ!この達成感と満足感たるや!

家族の幸せとは、個々の安定や幸せの上にあるという不変的な人間の業のようなものが象徴的に描かれていて、「幸福な家族像」という物質社会の作り出した理想に踊らされた中産階級の実態が暴かれていく。
理想と願望は一体ではないという現実を居たたまれなくなるようなブラックユーモアで包み込んでいるこのセンスにゾワゾワする。
アメリカを描いた作品だけど、同じように生きるに不要な物質にまみれた先進国には他人事ではない現実。

本質を見ている隣の若者に出会った主人公が自分の本当の幸福を取り戻していく流れは、形を変えた「ファイトクラブ」のようでもあり、ただのおっさんである主人公が「ハリボテの理想から脱却したヒーロー」に見えてくる展開が秀逸。
隣の家の元軍人の家族全員強烈だったけど、特に父親が雨の中ガレージで佇んでいたあのシークエンスは驚愕。なるほどなぁ、すげー。

暗示的な色彩構成だったり、妄想表現だったり、ジワジワと静かにあぶり出す独特な雰囲気の演出が魅力的。
感情サスペンスというのか、キャラクター一人一人がその瞬間一体何を考えているのか、俯瞰で見てればわかることが映画の世界に夢中になって見ていると全く先が見えず、次々起こる感情や行動に衝撃を受け、あぁそうかと納得するという伏線回収の如き本音の出し方が非常に面白かった。
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