チッコーネ

二秒間のチッコーネのレビュー・感想・評価

二秒間(1932年製作の映画)
2.7
「ランニングタイムが短いから」という理由で観始めたのだが、すごい迫力…、何がと言うと、エドワード・G・ロビンソンの演技に尽きる。
中盤の酩酊から異様な雰囲気だったが、一発逆転のチャンスを掴んだ際の昂奮、そして裁判所での激情発露場面に至っては、俳優冥利に尽きる『芸の見せ所』であったに違いない。

ここまでひとりの俳優に全体を預ける映画には、やはり信頼関係が不可欠。
監督とロビンソンは、本作から2年前の『犯罪王リコ』で大当たりを取った盟友同士である。
同作は30年代ギャング映画の先駆けとしてヒットしたが、映画としては粗削りなところも目立っていた。
ロビンソンの実力を知る監督は、彼が十二分に熱演できる器として本作を用意し、労に報いたといったところなのかもしれない。

とは言え本作も全体の完成度が高いとは、言い難い。
特に悪女であるヒロインのキャラクターに首尾一貫したところが見られないのは、どうも気になる。
奔放な30年代の筋金入りビッチなら、利用価値のなくなった男を敢えて養うはずがない。
女優のイメージを気遣う必要があったのか、はたまた編集の段階でカットされたのか…、説明的な場面がかなり不足している印象が残った。

またロビンソン演じる主人公とルームメイトの間に、同性愛的な匂いがわずかに香る。
もともと潔癖で内省的な性格の主人公は、親友の死に悲嘆、鬱状態の果てに復讐を志す…、何よりふたりがルームシェアしていた時にはダブルベットひとつが部屋の中央に置かれていたのに、新婚生活の開始後はなぜか、シングルベッドふたつというインテリアに様変わりしているのだ…、普通、逆なのでは?
またオープニングとラストに登場する大学生が、整ってはいるが非モテの『シシーゲイ顔』なのだ、これが…(などと考えると、ラストは余計意味深に観えてきたり)。
まぁあくまで下衆ならぬゲイの勘繰りなのだが!