Garikuson

ムカデ人間2のGarikusonのネタバレレビュー・内容・結末

ムカデ人間2(2011年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

駐車場で管理人を務める発達障害の中年男マーティン。彼の周囲を取り巻く環境は非常に劣悪なもので、自宅の上階には迷惑行為を定常的に行うチンピラ、マーティンに過去に性的虐待を行っていた罪で服役中の実父、実父を愛する余り投獄の要因を作ったマーティンを罵倒し続ける実母、喘息の薬をマーティンに届に来るがその実マーティンを性的な目で見続ける担当医の老人…。そんな彼の唯一の楽しみは、大好きな映画である「ムカデ人間」を仕事中に鑑賞する事であった。
次第に彼は映画にのめり込み、遂には映画と同様に人間の口と肛門を繋げて実際にムカデ人間を作りたいと考えるようになった。


この映画を語るにあたり特筆すべき点は3つ。

1.構成
前作のムカデ人間を劇中劇として扱う、という点は素晴らしい。前作で中途半端だった描写や詰めの甘い部分が、全て伏線として有効に機能している。

2.描写
基本的には全編モノクロで撮られているが、正直それくらいでちょうどいい。まともにやられたんじゃぁ個人的には辛いものがある。特に手術シーン。医療の知識も無い只のド素人が、工具でオペを行うんだから痛々しいなんてもんじゃない。麻酔が無いので頭を一人ずつバールで殴打して気絶させ、歯をトンカチでコツコツとへし折り、ハサミで足の腱を切り、ナイフでケツの肉を削ぎ、巨大ホッチキスでケツと口を接合する。まともな描写では正視に難い。自身が産み落とした胎児を踏み潰しながらさながら地獄甲子園のように逃げて行く妊婦さんも、映像的にも倫理的にもワァオな部分ではあるが…。
ただしかし、大便だけはキッチリとカラーで描くというのはまたパンチの効いた演出である。
血と区別がつかなかいと判断したのか?前作では描ききらなかった脱糞シーンを「どうだ、ウンコだぞ!」とこれ見よがしにアピールする為?(後者な気がするが…)
兎にも角にも、見ているこっちの顔が歪んでしまいそうな描写のオンパレード。

3.キャスティング
主人公マーティンは、作中で極端にセリフが少ない。ゲホゲホ咳込むか、フーッフーッイーッキーッと声にならない唸りを上げるか、ケタケタ笑うか咽び泣くかしか、ほぼ声を出さない男である。
そんな実に難しい彼を、見事に演じ切った主演の男性には惜しみない賛辞を送りたい。
男優には申し訳ないが、ビジュアル的にもチビデブギョロ目のハゲメガネと数え役満。自分を差し置いて言うのも何だがよくもまぁこんな気持ち悪いおっさんがおったもんだと感心する。
ムカデ人間製作用に拉致した人間が自分の手術で死んでしまったら覚束ない心臓マッサージを泣きながら行い、時既に遅しと気付いたらワンワン泣く彼を見ると、オモチャを壊してしまった小さな子供と変わらんなぁと寧ろ微笑んでしまったりさえした。素晴らしい(?)演技力である。

つらつらと語りはしたが、人にオススメできるかと言われれば、ぜんっぜんできません。オススメしてしまうと、相当理解のある人でないと人格すら疑われてしまいかねない強烈な1本です。
これを作り、世界に公開し、あまつさえ次回作すら手をつけているというトム・シックス監督に最大限の敬意と軽蔑を込めてレビューいたします。(まあ、それも思う壺だとは思いますが…)
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