プペ

ペイ・フォワード 可能の王国のプペのレビュー・感想・評価

2.3
心と体に傷を持ち、過去に縛られ外界に対して心を閉ざす男、「ケビン・スペイシー」。
信じることを渇望しながら、それを″アルコール″によってしか満たせない女、「ヘレン・ハント」。
そんな二人のラブストーリーとしてみれば、この映画はとても切実で素直に心を動かされる。二人のオスカー俳優のやりとりは時に微笑ましく、観る者を優しい気持ちにさせてくれる。

二人を結びつける少年はキューピッドの役回りである。
黄金と鉛の矢を携えた″気紛れな幼児″として描かれる小天使。
彼は、世の中の″善きこと″をめぐる自身の満足感とその効果を秤にかけて思い悩む少年として描かれる。
その中で少年は「ペイ・フォワード」という約束事を思いつく。


「ペイ・フォワード」とは何か?

″善きこと″を行うということは本来的に自己満足を伴い、常に自己欺瞞の罠に捕らえられるのであるが、それを「ペイ・フォワード」という約束事に置き換えることで″善きこと″を行おうという心情を常態化させる試みだ。
劇中でそれは本人の意図とは全く別のベクトルで成功するが、最終的に少年は自らの″善きこと″の為に自らを犠牲にして命を落とす。
まさに少年は″天使″となったわけである。

「ペイ・フォワード」は、人と人を繋ぐ約束事であると同時に、ケビン・スペイシーとヘレン・ハントを結びつけた愛情そのもの、キューピッドはアモルであり、エロスと同一視されることに思い至らせる。
しかし、約束事としての「ペイ・フォワード」は結局のところ、愛というものを単純化して目に見える行為として強制、定式化したともいえる。
ある意味で子供的な発想だ。

正直言って、こういった単純化や定式化に大人の複雑さを捨てきれない私は賛同できない。
そういったものを易々と神話化してしまうのが如何にもアメリカ的だなぁと感じる。
ラブストーリーとして観ればとても秀逸な作品だと思うが、そういう意味で少し不満も残った。
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