ろく

星くず兄弟の伝説のろくのレビュー・感想・評価

星くず兄弟の伝説(1985年製作の映画)
3.5
こんな映画に金だして撮らせることが出来るという「バブル」という時代の天真爛漫さね。

いや皮肉を言っているのではないの。逆で映画というものがある種の「階級者」たちのためのものであるってこれほど思わせる作品もないんじゃないかな。

棒読み、意味不明なシーン、ひたすらに撮りたいものを撮る、そんな感じで撮り続けたらこんな映画になってしまった、そう思うの。いやこの映画は破綻しているんだよ。でもね、観てみるとわかるんだけど妙な「魅力」に溢れているの。これはずるいなぁ。

主役二人もいいんだけど戸川京子の魅力ね。もうこの時代だからこそ溢れる魅力。ほんとかわいいの。なぜこの時代の子はみんな髪を後ろにまとめるんだろう(そこがいいんじゃない!)

そしてロッキーホラーショーをオマージュにしたのか知らないけど(それは見事に全く違うものになった)このころの日本ロックの軽薄さね。音楽なんか全てチープなのに楽しい(イカすバンド天国のようなチープさ。素人しかいないアマチュアな時代)。

さらには尾崎紀世彦の破壊力ね。もう見ていて苦笑を通り越して神々しいの。最後尾崎が歌うシーンなんか自分直立不動で聞き入っちゃったもん。

というわけでなんじゃこりゃムービーです。80年代というもう決して戻ることのできない「日本が最高に強かった時代」「でも中身なんかなんにもなかったスカスカの時代」「そしてそのスカスカを悩むことなく楽しんでいた時代」をこの映画は味わうことが出来るんだ。そうだ「スカスカ」を楽しもう。全ては表象だけの記号でしかないと言わしめた薄っぺらい時代を。

そして今となっては誰も戻れない時代を。
ろく

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