ブタブタ

タクシードライバーのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

タクシードライバー(1976年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

『リベリオン』『エクスターミネーター』その他諸々と並ぶ厨二病の聖典(バイブル)
少なくとも自分にとっては。

久しぶりに鑑賞しましたやっぱり地上最強のボンクラ、トラヴィスは最高です。

アメリカンニューシネマの傑作でありベトナム戦争後の「病んだアメリカ」を描いた傑作...と言うよりももはや全てはトラヴィスの狂気・ボンクラ具合い・カッコよさ・その他諸々、兎にも角にもトラヴィスに憧れ痺れます。

ベトナム帰還兵の孤独と何処にも居場所がないと言う二重の孤独。
友達も恋人も無く同じ繰り返しの毎日。
「そうだ大統領候補暗殺しよう!」
かくして始まる『トラヴィスVSセカイ』
完全にセカイ系主人公。
自意識過剰と自分は特別、人とは違うと言うナルシズム。
自分こそが唯一正しく腐りきったこの世界を浄化出来ると言う圧倒的な勘違い。
そして更にマズイ事に突然目の前に現れる女の子(少女娼婦アイリス)までちゃんと居るし。

裏ルートで手に入れた4丁の銃。
体を鍛え、戦闘用特殊装置(袖から銃がシャキーン)を制作。

ガスコンロで拳を炙るトラヴィス(アホだ・笑)
裸にガンベルト、マグナムを抜き鏡に向かってポーズを取るトラヴィス。
「俺に用か? 俺に向かって話しているんだろう? どうなんだ?俺に用か?俺か?俺に向かって話してるんだろ?どうだ?どうなんだ?俺に用か?俺に...」

そして暗殺へと向かうトラヴィス。
モヒカン、グラサン、アーミージャケットの気合いが入りまくった目立つ事この上ない格好で。
あっさりSPによって計画を阻止されるトラヴィス(そりゃそうだろう)

そして真のクライマックスへ。
アイリスが待つ買春宿でポン引き、用心棒、客を次々と殺して行く流れる様な血みどろのカタルシス。

この映画はトラヴィスの一人称視点の物語であり現実か幻想かはっきりとしない...との評も拝見しますが自分も同感で特にこのクライマックス、トラヴィスの不死身さと無敵さは現実離れしており全てはトラヴィスの妄想だったのかもしれない、と考えるとこの場面はトラヴィスの狂気を具現化した幻想世界を我々は見てるのであって、より現実離れしたセカイ系の理想とする夢の世界、アメリカンニューシネマではなくラノベに近しい作品と感じられ益々トラヴィスが魅力的かつ壮絶なボンクラとしてのファンタジーの存在、虚無感をまとったアンチヒーロー、ダークヒーローとしてカッコよく思えます。

ポン引きの腹を撃ち買春宿に突入、用心棒の指をマグナムで吹き飛ばすもまだ息があり追ってきたポン引きに首を撃たれる。
ポッカリ穴の開いた首を手で押さえてポン引きを射殺。
これよりのトラヴィスは正に不死身、無敵、ゾンビの如きモンスターへと変貌しています。
更に腕を撃たれマグナムを落とすも此処で待ってましたとばかり袖から銃がシャキーン!と飛び出し客を射殺。
そしてコチラもゾンビの如く不死身さで「殺してやる!殺してやる!俺が殺す!殺す!殺す!」と這って襲い掛かってくる用心棒を足に装着したナイフを抜いて残った左手を串刺し。
そして銃でとどめ。
泣き叫ぶアイリス。
自分の喉元に銃を当て引き金を引くも弾切れ。
カメラが部屋をゆっくりと舐めていくと血だらけの地獄絵図。
やって来た警官隊を優雅に眺めながらソファに座り血だらけの指をコメカミに当て引き金を引く「プシュープシュー...」

ギャングから少女を救った英雄としてマスコミに祭り上げられアイリスの両親からは感謝の手紙が。
しかし直ぐにそんな事は人々から忘れ去られるでしょう。

そしてラストへ。
この謎めいたラストが夢オチかも?と言われる所以ですが、かつて自分を袖にした女性ベッツィをタクシーに乗せる。
自分を尊敬の眼差しで見つめるベッツィ。
今度はトラヴィスがベッツィを袖にし「お代はけっこう」とカッコよく去っていく。

あれだけの事をしてトラヴィスは無罪放免?
あっさりとタクシードライバーに復帰しているトラヴィス...

しかしこれが現実でも幻想でももはや大した違いはありません。
「17日後には新しい大統領が誕生する」
トラヴィスは間違いなくまたグラサン、モヒカン、アーミージャケット(笑)にマグナム、袖から銃がシャキーン!のフル装備で大統領を殺しに行くでしょう。

トラヴィスのいる世界「病んだアメリカ」とは同時に今この世界の事でもあるし幻想のアメリカ帝国でも大日本帝国でも、あの黄色いタクシーの行く先はトランプタワーでも首相官邸でもかまわない。

悪や犯罪を裁くのは本来公的機関の仕事であり、
それを勝手に自分でやり出す「ヴィジランテ物」に於けるヒーローははっきり言ってはた迷惑で狂ってる存在で社会にとって厄介者でしか無いでしょう。

己で「悪」や「裁く相手」を勝手に認定して殺しに行く。
それはもう己を「神」と錯覚している様な感覚。
すなわちトラヴィスは狂える神であり絶対的な正義のヒーロー。
これはトラヴィスの世界何ですから。

以上です。
ブタブタ

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