<概説>
いつも女房の尻に敷かれている大学教授の元に、現代的な思想を持った姪がやってくる。彼女は傍若無人な妻の言動に反感を抱くのだが、それを諌めない夫には夫なりの考えがありーー
<感想>
とても先駆的な家族観が見えるーー
と考えていたのですけれど、よくよく考えてみればこの時代的にはこれはそう珍しい思想でもないのかもしれません。
1930年代の映画は散逸しているものが多いですけれども、他メディア作品に目を向ければ田山花袋『布団』だとか谷崎潤一郎『痴人の愛』だとか、新派な女性を礼讃するものも結構な数見られます。
家父長制による男性優位社会の崩壊はどうしたって戦後に定義されますけれども、こういった個人個人の思想レベルになると、随分早期から反男尊女卑思想って栄えていたんだなあと驚かされますね。
まあ本作の肝っ玉母さんはともかくとして、『痴人の愛』のナオミのような悪魔的女性が溢れては困りますが。
そういえば小津映画における父親が女性に手をあげるシーンって結構珍しいですよね。この暴力的な描写の含意もどういったものなのか研究甲斐がありそうです。