マヒロ

鬼軍曹ザックのマヒロのレビュー・感想・評価

鬼軍曹ザック(1950年製作の映画)
3.5
(2024.116)
朝鮮戦争において、仲間が全滅し一人彷徨うザック(ジーン・エヴァンス)は、たまたま出会った現地人の少年に助けられる。戦争孤児である少年に懐かれ“ショートラウンド”というあだ名を付けて共に移動するうちに別の分隊と出会い、ひとまず人気のない寺院に拠点を構えるが、そこに敵が襲い掛かり……というお話。

サミュエル・フラー監督の初期作品。まだ後年の作品のような鮮烈さはまだないが、敵味方関係なく不意に呆気なく命を落としてしまうという過酷さと、それをしつこく描かないドライさは既に健在。
ザックが合流する分隊はまだ実戦経験の浅い兵士ばかりで頼りなく、自然とザックが指揮をとっていくことになる。面白いのが、分隊にいる日系人兵士や別で合流する黒人衛生兵が戦闘面・知識面で白人兵士よりも優れた人として描かれているというところ。現地人の少年とザックの歳の離れた奇妙な友情関係も含め、まだ人種問題への理解が足りなかったであろう50年代の作品と考えるとなかなか興味深い。

寺院に舞台が写ってからが本番のようなところがあるので、前半は若干退屈な場面もあるのが難点だが、個性豊かな兵士たちの掛け合いや、戦争の無情さと人間の優しさを描いた切ないラストなど、見どころも多い佳作だった。
ちなみに、主人公のザックは邦題では勝手に“鬼軍曹”呼ばわりされているが、多少厳しいところはあれど全然鬼でも何でもないので若干詐欺タイトル。原題は「steel helmet」なので直訳すると確かにちょっと地味かもだけど。
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