鬼軍曹ザックの作品情報・感想・評価

「鬼軍曹ザック」に投稿された感想・評価

戦争孤児に黒人に日系人と、各々の出自、個性を丹念に描き、没個性で教科書通りな言動しかできない中尉に対してはザックの風当たりはことのほか厳しい。兵士である以前に個人としての意思を持たない人間、引いてはそれを許さない戦争のシステム自体に対しての挑戦と見える。
最初と最後のカットをダブらせて「この物語に終わりはない」とテロップまで流す演出は少し過剰に見えるけど、朝鮮戦争真っ只中にあって制作された中でこういうメッセージが強調されることは寧ろ監督の意思の強さの現れとも受け取れる。
実際の砲撃映像を劇中に一部散りばめたところで、映画が現実と地続きにあるものだと改めて思わされ戦慄が走った。
10

10の感想・評価

3.4
フラーの東洋思想に対するズレた解釈がなければ仏像の中指に輸血バッグをくくりつけるような奇跡的なショットは生まれなかっただろう。
誰もが何かを得ることもなく、ただ死んでいくだけ。戦争における命の軽さに国も人種も関係ない。
an

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3.8
『チャイナ・ゲイト』と似た点がちらほら。フラーは女子供に甘くなく、むしろ冷酷な運命を与える。ゆえに導き出されるヒューマニズム。基地となる寺の大仏を前に拝む少年を俯瞰で捉えたショットが興味深い。しかし大仏の顔はこれでいいのか…?
netfilms

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3.3
 1個の穴の開いたヘルメットが地面に置いてある。タイトルバックが終わるとヘルメットがゆっくりと上がっていき、苦みばしった男の雄姿が顔を見せる。彼の顔は戦場の土と砂煙ですすけており、微かに葉巻を咥えている。原題を「THE STEEL HELMET」というこの物語は、文字通り「鉄兜」を被った軍曹の物語である。銃弾の穴が貫通し、ヘルメットの効果を成さないその鉄兜が、軍曹にとっては勲章であり、ラッキー・アイテムとしての縁起担ぎにもなるのである。これは言うまでもなく、生き残りの象徴としての兵士の物語なのだ。ザック軍曹の部隊は敵の奇襲に合い全滅し、唯一生き残ったのはまたしてもザックだけだった。そこに遠くから物音が聞こえ、敵兵襲来と踏んだ彼は土の上に伏せ、死んだふりをする。その彼を無理矢理起こし、介抱したのはショートラウンド(ウィリアム・チャン)という名の朝鮮の戦災孤児の少年だった。サミュエル・フラーは実際に第二次世界大戦中に勲章をもらうような筋金入りの兵士(歩兵)だった。その経験を生かし、朝鮮戦争中に敵陣の背後で孤立した米兵の1分隊をでっち上げる。ザックはアメリカの戦時下の英雄でありながら、ここで朝鮮戦争孤児の少年に掬い上げられ、彼と行動を共にしていく。そんな2人の彷徨に今度はトムソン伍長(ジェイムズ・エドワーズ)という黒人兵士が目の前に現れ合流する。今作は朝鮮で孤立した兵士が、朝鮮人の少年と黒人に助けられる物語なのである。

だが戦争映画とはいえ、予算と撮影日数の制限はいかんともしがたい。映画は始まりから敵の砲撃の音はするものの、その弾は一向に飛んでくることがない。何やら茂みの奥にいるらしいことが明らかにされるのだが、茂みの向こうは靄がかかっていてよく見えないのである。セット撮影の制約からかロング・ショットもなく、映画は味方たちの表情をクローズ・アップで据える。そうこうしているうちに、ザックはドリスコル中尉(スティーヴ・ブロディ)を隊長とするブロント(ロバート・ハットン)、タナカ(リチャード・ルウ)の部隊と合流する。中盤から彼らは仏教寺院を目指して彷徨い歩くが、実際にその寺院に着いてみると何とも貧相な建物に書き割りのような仏様が鎮座している。フラーは戦争そのものよりも、彼ら1人1人のキャラクターや背景を丹念に描こうとしている。髪が全て抜け落ち、育毛剤をつける白人兵、真面目な日系兵士、無口な兵士など様々な個性溢れる兵士たちがここに集う。寺院での束の間の会話の中で、朝鮮戦争に参加することになった兵士たちの思いが滲んでいる。途中のオルガンによる『ホタルの光』と朝鮮人少年の熱唱はなんとも言えない名場面であろう。そこに兵士たちのこの戦争への思いが色濃く投影されるのである。

隠れている北朝鮮将校を逮捕し、ショートラウンドとともに司令部へ護送しようとした矢先に悲劇は起こる。問題は捕虜の死よりも、その後の激昂したザックによる北朝鮮将校の殺害であろう。ジュネーブ条約を守っていたはずのアメリカ人が、その条約を無視して殺害していたとなれば軍法会議にかけられるような大問題だが、フラーは戦争というものは道理の通じないものであるということを声高に叫んでいる。実際に今作が封切られた時期はマッカーシズム溢れる雰囲気であり、戦争のタブーをストレートに描いた今作は真っ先に糾弾された。しかしながらそのことがかえって全米中の注目を集めることとなり、映画は独立系プロダクションのB級映画としては記録的なヒットとなる。余談だが、『インディ・ジョーンズ』シリーズのパート2『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』において、主人公のインディについてくる キー・ホイ・クァンが演じた中国人の少年は、今作の朝鮮の戦災孤児の少年と同じ「ショートラウンド」と名付けられている。あの映画でスピルバーグとルーカスは、サミュエル・フラーというB級映画の大先輩にオマージュを捧げているのである。
tjr

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3.9
戦場における生死、勝敗という二項対立を超えた戦士達の信仰心や矜恃。拠点となる寺院や彼らのヘルメットがその証であるかのよう。
更に80分で個々のパーソナリティを織り込みつつ、ユーモア、アクションも交える巧みさに唸る。
大仏に輸血袋掛けたりハゲ頭に土塗ったり、フラーの発想力には驚かざるをえない。
紫色部

紫色部の感想・評価

4.0
2016.2.16 DVD

緊張感に満ちたシリアスシーンと奇異なニュアンスのコミカルシーンとのバランスが絶妙な戦争映画の傑作。個性的な顔立ちをした兵士達のキャラクターから、皮膚の色で差別被差別の立場へと容易に変化し判断されうる存在としての人間や、自身の出自で殺される側か否かが容易く色分けされうる存在としての兵士の、その判断基準における意味合いの馬鹿馬鹿しさを、その当時としては異端な雰囲気のジャンルを通じ訴えていたように感じられた。
mingo

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4.1
兵士の前に人間であることの譲れない想いとか思想があるんだよ!て物凄く伝わってくる映画だった。韓国人の少年、黒人、日系米国人、朝鮮人捕虜、ありとあらゆる人種問題をフラー独特のユーモアで切り取った本作だが、スピルバーグがオマージュするだけあって戦争映画の傑作でしかなかった…寺院の大仏の顔芸で笑わせにくるのとか、手榴弾のピン外れちゃった…とかフラーらしさ全開。変なんだけどそれがむしろ良い。

戦争はじぶんの家を守らないといけないと感じたら、戦う意思のない者でも強性的に戦わざるをえない。エンディング前に流れる「この物語には終わりはない」という文字が終わる事のない戦争と平和に対する願いが込められていると思った。ザックが爆撃うけてアホになるのって「プライベートライアン」やないか!って思ったのは僕だけでしょうか。。。

今月ユーロでフラー特集がやるので観るべきオススメの一本。ちなみに「蛍の光」て1948年の大韓民国建国前は国歌だった知らなかった…
大仏が不気味でいい、アウトサイダーたちが集まり戦うって設定が泣ける。
ドッグタグが、ある意味不運を呼び寄せたようで、あのシーンは非常に好き。
またまたフランク・ミラー監督作品。

朝鮮戦争が舞台のお話。
ドキュメンタリーによると実際に戦争を経験した監督なのでリアリティ重視…と言いたい所ですがお金がなかったのでしょう、基本的に動きはなく1つのシチュエーションの中の会話劇で心理的なリアル感を出してきてます。

セットの仏像がコミカルで愛おしくなります。大仏の指に点滴引っ掛けちゃダメでしょ!

やっぱり『ホワイト・ドッグ』『ストリート・オブ・ノー・リターン』に比べると地味だけどメッセージ性もあり見応えありました。。
菩薩

菩薩の感想・評価

4.0
思ってた以上に大仏がブサイクだった。ハゲは土付けて揉むと髪生えるらしい、本当だろうか。黒人衛生兵のバスの話はなかなか深かった。あっ、やべ!手榴弾のピン抜けちった…は笑えた。ショートラウンドのドックタグ投げつけるとこは泣けた。自分で撃っておいて、おい!輸血しろ!はさすがに自分勝手だなぁと思った。最後の戦闘はなかなか派手で見応えがあった。全体的にヘンテコだったけど、観た後なんだか幸せな気持ちになった。
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