押しも押されぬ名作だ。アメリカ映画デビュー作となるネストール・アルメンドロスの撮影と、モリコーネのサントラが素晴らしいのは言うまでもないが、95分とは思えない濃密な人間ドラマにも深く胸を打たれた。
2年ぶりの再鑑賞。今回の最大の収穫は、本作がアメリカン・ニューシネマの流れを汲む社会派リアリズムドラマであると理解できたこと。初見時は広大な農場を舞台とする若い男女の三角関係メロドラマがメインストーリーだと思っていた。しかし、今回の鑑賞ではっきりと見えてきたのは、若者達の破滅的な青春ドラマと、仕事を求めて各地を転々とする季節移民の悲哀ドラマだった。思い返せば、オープニングのモノクロ・ドキュメンタリー写真からそのトーンだった。
西部開拓時代の終焉を描いた歴史ドラマの側面も持ち合わせている。大自然が四季の移り変わりを、乗り物🐎🛻🚜🚂🛩️🚤が時代の移り変わりを物語っていた。
広大な大自然と、閉鎖的な人間関係の対比も効いている。イナゴの大群と大火を前に、人々はなす術がない。
テレンス・マリック監督の特徴であるボイスオーバーが、幼い妹視点であることも特筆すべきポイントかと。詩的で、内省的で、哲学的な問い掛けに加え、アメリカジュブナイル映画のようなアドベンチャー感も与えている気がした。
"Sometimes I'd feel very old, like my whole life is over, like I'm not around no more."
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アカデミー撮影賞を獲得した、テレンス・マリック監督の長編第2作目。
20世紀初頭、テキサスの農場。季節労働者として雇われたシカゴ出身の若者が、恋人を自分の妹だと偽り、若い農場主と結婚するよう持ちかける。
"Nobody's perfect. There was never a perfect person around. You just have half-angel and half-devil in you."
【映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネ祭り】 Vol.1。テレンス・マリック監督作品、初鑑賞。
もはや言うまでもないかもしれないが、広大な自然の風景が美しい。朝夕のマジックアワーを狙って撮影したらしく、自然光ならではの淡くて繊細な映像が見られた。映像だけでなく、若い男女の愛憎劇も心に響くものがあった。
詩的。四季折々の壮大で美しい映像の数々を、主人公の妹のボイスオーバーで繋いでいく。時間経過を忘れ、映像に飲み込まれてしまうような感覚があった。
人間同様、動物、植物、乗り物、昆虫も、"自らの意思を持つ生き物"として撮影されているように感じた。特に、風で波打つ黄金の小麦畑、火の海、稲刈り機を始めとする乗り物が"生きていた"。人間も世界の一部ということを強く印象付けられたし、持てるものと持たざるものの差、自然の残酷さも痛感させられた。
レトロな乗り物が映える。大型農作機械。小型飛行機。自動車。オートバイ。
若き日のリチャード・ギアとサム・シェパードが恋敵に。
モリコーネのテーマ曲。人間の一生を表現したような雄大さ、美しさがあった。
生命。四季。農場の1サイクル。人間の一生。人間、動物ウマ、鳥キジ、植物小麦、昆虫イナゴ、芽吹きを地下からクローズアップで。イナゴの大群。虫嫌いな人は要注意。
テキサスの田舎の農場を舞台にした三角関係ドラマということで、『ジャイアンツ』を想わせる節あり。
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